やぁ諸君ごきげんよう。
ぼっちメシ研究所のジャムだ。
世の中には「ハズレな店」というものが存在する。
確実に。
しかし、いったい何をもってその店を「ハズレな店」と判断するのか?
その明確な基準は存在しないが、食事をしたその店の「料理の質もしくは量」「接客態度」「衛生管理」「雰囲気」「料理が提供されるまでの待ち時間」「価格設定」などが期待値を大きく下回ったとき、人はその店を「ハズレなお店」だと判断するのかもしれない。
とにかく「もう二度とこんな店にはもう来たくない」とか「こんな店にお金を払いたくない」って思ったのなら、その店は「ハズレな店」だと言えるだろう。
これまではブログでは、不幸にもそんな「ハズレな店」に出会ってしまった時、その店のことは記事にはせずに、そこで体験したアレやコレやは心の奥深くにあるハズレなお店専用墓地にひっそりと葬ってきた。
密葬だ。ノーカウント。そんな店は無かったことにする。
しかしそれはブログに書くネタにならないということであり、ただでさえ更新が遅いこのブログの更新頻度がさらに下がることになってしまう。
これは非常によろしくない。
その打開策として、かつて闇へと葬ってきた「ハズレな店」の腐りかけの死体を掘り起こし、記事にしてみることにした。
少しでもブログの更新頻度を上げるためだ。仕方がない。
ハズレなお店の記憶が土へと帰ってしまう前に、せめて最後くらいは派手に踊ってもらいたい。
そうすることで、きっとハズレな店の供養にもなるだろう。 たぶん。
そんなコンセプトが「モヤっとするお店」というカテゴリーの記事。
さて、今回ご紹介するハズレなお店は、とある町のとある食堂。
お店の名前やその場所は明かせない。
この店は地域住民や地域労働者向けの食堂で、ガッツリ系のメニューを幅広く提供している。
蕎麦やうどんなどの麵類がおよそ700円~800円、もつ煮込み定食や天ぷら定食などの各種定食類が1,000~1,300円、それにカレーなどなど。
また海にも近いためか、魚介類を使った料理などもそろえている。
なかでも特に「天丼」に力を入れているようで、アナゴ天丼やエビ天丼など、ネタの異なる多数の天丼がラインナップされていた。
とりあえず天丼を食べてみることにしたが、天丼の種類が多過ぎるため、いったいどの天丼を選べばいいのか分からない。
注文を取りに来た店員さんに、おススメの天丼を聞いてみると「相盛り天丼は色々な天ぷらが入っていますから、相盛り天丼がおすすめですね!」とのお答え。
なんでも相盛り天丼以外の天丼、たとえばアナゴ天丼であれば天ぷらネタはアナゴのみ、エビ天丼ならエビのみと、1つの食材のみの天丼になるとのこと。
なるほど、じゃ相盛り天丼でお願いしまーす!
そして注文して間もなく届けられた『相盛り天丼』1,100円がこちら。
サラダ、味噌汁、お新香付き。
丼ぶりの中から甘辛いタレの香りがもうもうと湧き上がり、そしてその香りは鼻を抜け脳のどこかにある「食欲のスイッチ」を強制的にONにする。
巨大な天ぷらに箸を入れるとサクッ・・・と軽い手ごたえを返す。
箸でひとつ掴みして口へと運ぶ。
う・・・おおぉ!
これ、めちゃくちゃ美味いじゃないっスかぁぁ!!
特に天ぷらの衣が秀逸だ。
やや厚めにみえる衣だが、しかしこの衣は空気をたっぷりと含んでいて、見た目よりもずっとずっと軽く仕上げられている。
決して「ネタが大きく見える」ようにするたもの厚い衣ではない。
衣と空気の層が幾重にも重なっていて、まるでエアインチョコのようなサクサクとしてサクフワな食感。
これはクセになる。
なんというか「衣」それ自体が美味い。
こんな天ぷらって初めて食べたぞ。
ネタも申し分ない美味さ。
なにより天ぷらの仕上げが美しい。
天ぷらを下から支える白米は、やや硬めに炊き上げられていて、これまた天丼に良く合う。
丼物のご飯は硬めに炊いた方が絶対に美味い。
柔らかいご飯だと、米が必要以上にタレを吸っちまって、やたらとベチャベチャになるからイマイチ美味しくない。
天丼のご飯は硬めに限る。
雑に温められた味噌汁はワカメの風合いがほとんど飛んじまっている。
ま、ま、味噌汁はこんなもんか。
いや、それにしてもすごい天丼だ。
天丼を売りにしているのも納得の美味さ。この店の天丼がたまらなく好きになった。
この店には何度か通ってみようと思った。
ぜひ他の天丼も食べてみたい。
しかし、天丼ばかりを続けて食べるってのはちょっとばかり問題がある。
おもにブログ的な理由で。
なんといっても天丼って料理は絵的な面白味が足りないのだ。
地味なのだ。それも決定的に。
たとえば他の天丼を食べてみたとしたとしても、今回食べた相盛り天丼とビジュアル的には大きな違いはないだろう。
その見てくれは「茶色い衣に包まれた天ぷらが丼ぶりにのっているだけ」と、じつに退屈なルックス。
これはよろしくない。
あまりにも変化が無さすぎ、刺激が無さすぎる。
ビジュアル的な変化を付けるためにも、天丼の連食は避けなければならない。
なので一度、何か定食のような別の料理を食べて「絵的なバリエーションを確保」してから、あらためて天丼を食べることにしよう。
相盛り天丼を食べたその数週間後、ふたたび店を訪れた。
本音を言えばまた天丼を食べたいのだが、絵的な起伏を付けておきたいので今回は天丼をパス。
じゃ、天丼の代わりになにを食べようかと思案していると、店の壁に掲げられているホワイトボードが目に留まった。
『刺身盛り合わせ定食』1,650円。
なるほど刺身か、悪くない。
それにこの店は海に近い場所にあるのできっと美味しいお刺身を出してくれるに違いない。
注文から10分ほどで運ばれてきた『刺身盛り合わせ定食』。
刺身の盛り合わせに、サラダ、味噌汁、ごはん、小鉢。
なにしろ驚いたのは、その盛り合わせの内容。
イカ、マグロ、カツオ、ハマチの4点盛り。
えぇ・・・?
1,650円もするっていうのに、刺身はたったのコレだけなの?
ウソだろ・・・?
刺身には特にコレといった高級魚が使われているワケでもないし、それに4点盛りのうち1つは安価なイカだ。
なんというしみったれた盛り合わせ。
こりゃ原価は相当に安いぞ。
いや、そりゃ注文するときに「刺身盛り合わせ」のその内容について確認しなかったこちらの落ち度もある。
あらかじめ刺身の内容を聞いておくべきだった。
しかし、これまで他のお店で食べてきた刺身定食の内容と値段のバランスから考えて、1650円という価格設定から「きっとスゴイ刺身が出てくるのだろうなぁ」と勝手に期待してしまった。
ご参考までに、これまでこのブログでご紹介した刺身定食は、以下のような内容だった。
那珂市の『寿司割烹 末広』の刺身定食は1,100円(税込み)で刺身は5点盛り。しかもマグロはとろけるような中トロを出してくれて、さらに小鉢とデザートまで付いてくる。
ひたちなか市の『旬菜かすが』なら1,400円(税込み)で、旬の魚を使った刺身が7点~9点盛り。さらに日替わりの小鉢と味噌汁またはアラ汁、それに手作りの漬物、そして食後のコーヒー。
東海村の『雑魚屋』なら、800円(税込み)ほどの定食を注文すれば、メインの料理とは別に脂がのった立派なマグロの刺身が6切れほど付いてくる。
これらの店の料理に比べ、このド貧相な4点盛りの刺身定食が遥かに高額なプライスタグを堂々とぶら下げているという現実がまったくもって飲み込めない。
いったい、なんなんだこれは?
悪夢か?
なんだってこの刺身の盛り合わせ定食が1,650円もするんだ?
ひょっとして、この刺身のイカは、深海数千メートルにだけ生息しているとても貴重なイカなのか?
ひょっとして、この刺身のハマチは、人間の言葉を喋る珍しいハマチなのか?
ひょっとして、この刺身のカツオは、空を飛ぶ奇跡のカツオなのか?
ひょっとして、この刺身のマグロは、これまで何隻ものマグロ漁船を海の底へと沈めてきた伝説のマグロなのか?
刺身盛り合わせ定食に、なんだか言い訳がましく添えられた納豆の小鉢。
おいおい、納豆だって?
ふざけてるのか?
だって茨城の納豆ってアレだろう?
クラファンで「生涯納豆定食無料パスポート」と引き換えに金を集めておいて、いざ納豆定食を食べに行けば何やかんやと難癖を付けて無料パスポートを没収されるっていう例のアレだろ?
こっちはお見通しなんだぞ!
騙されるもんか!
それにしても、あれだけの素晴らしい天丼を作る腕がありながら、なんだってこんな貧相な刺身定食を法外な値段で売りつけるのだ。
まぁ、きっとこれがいわゆる「観光地価格」ってやつなんだろう。一見さんの観光客相手に、思いっきりふっかけた値段でぼったくる商売のやりかた。
このバカげた値付けは、県外から観光魚市場や海水浴場にやってきた観光客をターゲットにしているってことが明らかで、それは定食に添えられた小鉢が茨城名物の納豆ってところにも滲み出ている。
こうして文章に書き起こしてみると、私がこの『刺身盛り合わせ定食』に対して不満に思ったことは、要するに「値段が他の店に比べて数百円高い」とか「刺身がショボい」とか、よく考えてみると実にみみっちい話で、そんなに目くじらを立てるようなことじゃないのかもしれない。
でも、なんつーか、なんだかなぁ。
この店で天丼を初めて食べた日から、この店のことをブログに書くべきか、はたまた書かざるべきか? そんな自問自答にモヤモヤとしたまま1年以上の時間が経過してしまい、今日に至ったのでした。