【うなぎ桐】関東風のうなぎ蒲焼の極めつけ!うなぎってここまでフワフワに仕上がるものなのか@茨城県つくば市

かつて茨城県民が東京にアクセスする手段は、おもにJR常磐線に限られていた。

水戸市などの県央地区からは特急列車に乗ったとしても、終点の上野駅に到着するまでには早くても90分以上の時間を要する長旅だった。

しかし2005年、東京秋葉原と茨城県つくば市と結ぶつくばエクスプレス(通称TX)が開通すると、茨城県から東京都へのアクセスが飛躍的に容易なものとなる。

以来、つくば市をはじめとする県南地域の住民の数は右肩上がりに増え続けた。

そして2022年。

つくば市の人口は23万人を数え、まもなく茨城県の県庁所在地である水戸市の人口(27万人)に近づき、やがて茨城県の新たな中心地へとなるべく現在も成長を続けている。

うなぎ桐

そんなつくば市に、ものすごく気になるウナギ屋さんを見つけたので、食べに行ってみることにした。

その店が今回ご紹介する『うなぎ桐

まだオープンから間もない新しいお店だが、すでにネットでの評判は上々。

なんでもご主人は水戸のウナギの名店『ぬりや』で長年修業をされた方なのだとか。

 

やぁ諸君ごきげんよう。

ぼっちメシ研究所のジャムだ。

外観

クルマを走らせること1時間ちょっと。

つくば市の『うなぎ桐』へと到着。

こちらが『うなぎ桐

ウナギをイメージしたかのように黒を基調にした外観。

シックでモダンな印象を受ける。

黒い暖簾をくぐり、店内へ。

店内の様子

出迎えてくれたのは女将、というか若女将。

その出で立ちは、黒いエプロンと黒いキャップと、かなりカジュアル色が強めの装い。

ウナギ屋の若女将というよりも、どちらかと言えばハンバーガー屋とかピザ屋のスタッフのような雰囲気。

ご予約のお客様ですか?」と尋ねられ、予約はしていないことと、一人客であることを伝えると、カウンター席へと案内された。

こちらがカウンター席。

店内は明るいベージュを基調とした優し気で柔らかい雰囲気。

店の外観のキリリとした黒とは正反対のイメージ。

カウンターの他に座敷席もある。

座布団まで黒でそろえているあたりに並々ならぬ黒に対する強いコダワリが感じられる。

運ばれてきたメニューの表紙も黒。

その黒い表紙をめくると、中はベージュ。

まるでこの店の外観と内装に呼応するかのように、メニューも黒とベージュのコントラストを見せる。

メニューを持って来てくれた女将さんから「本日はうなぎの入荷が少なくて、申し訳ありませんが、上段のメニューのみのご提供とさせて頂いております」と伝えられる。

あらら。

当初の目論見としては、うな重の「並」とメニュー下段のサイドメニューからなにか選んで注文するつもりだったのだが、あてが外れた。

なにはなくとも、まずはうな重ですよ。

うな重のラインナップは3種類。

実にシンプル。

  並  4,070円
  上  5,170円
  特上 6,270円
さすがはウナギ。お値段まではカジュアルとはいかないもんだ。
女将さんにウナギの産地を尋ねてみると、並は愛知県産、上は鹿児島産、特上は宮崎産だという。
へぇー!
うな重の「並」「上」「特上」のランク分けって、使用するウナギの大きさで分けることが普通だと思っていた。まさかそれぞれに使われているウナギの産地まで異なっているとは。
なるほど、ならば「並」を注文したのならば、きっと並のウナギが出てくるのだろう。では「特上」を注文したら・・・?
きっとそんじょそこらではお目にかかれないような「特上」のウナギが出てくるに違いない。
並のウナギだって相当に美味いのに、さらにその上を行く特上だなんて、いったいどんなウナギが出てくるのかまるで想像もつかない。
久しぶりのウナギだから、ちょっと奮発して「特上」を行ってみるか。
そうと決まればさっそく注文。
「あ、あの・・・と、と・・・特j・・・あの、特上をお願いします」
思わず声が震えた。

ビールでも飲みながらウナギの焼き上がりを気長に待ちたいところだが、あいにくとクルマなのでアルコールはご法度。

なのでソフトドリンクから『山梨県産100%桃』を注文。

こいつをチビチビやりながらウナギを待つとしよう。

うな重 特上

濃ゆい緑茶。

玄米茶のようなこうばしい風味がある。

ブレンドしているのか。

ウナギというものは、注文を受けてから捌いて焼くため、どうしても提供するまでに時間がかかるものだ。

どの店でも大抵は40分から60分ほどの時間がかかる。

せっかちなことで有名な江戸っ子たちでさえも「ウナギ屋で急かすのは野暮」なんて言いながら、ウナギが焼き上がるのをただジっと待つしかなかった。

とにかくウナギ屋では待ち時間は発生するのは致し方がない。

でも、そんな無駄な「待ち」の時間を回避する方法が一つだけある。

それは予約することだ。

事前に予約をしておけば、待ち時間もなくスムーズに焼き立てのうな重にありつける。

予約をすることで、人生の貴重な時間を無駄に浪費することもなく、とても合理的。

 

しかし、私はウナギ屋に行くときには、いつも予約はしないことにしている。

あえて。

なぜならウナギの焼き上がりを待つことがまったく苦ではない。

それどころか、ウナギが焼き上がるのを待つことがとてもが好きだ。

別に茨城の田舎者が、無理に背伸びして江戸っ子を気取りたいわけではない。

ただ、ウナギの焼き上がりをじっくりと待ち、それから食べたい。

これはちょっとしたこだわりだ。

その理由については後述するとして、今は大人しくウナギを待つことにしよう。

待つのが好きと言っても、ただボンヤリと何もない宙の一点を眺めて過ごしていたのでは、ちょっとアレな人だと思われてしまう。

ということで、現代人らしくスマホをイジりながらウナギを待つ。

30分ほど待っていると、厨房の方からウナギを焼くたまらない匂いがただよってくる。

それから間もなくして、お新香と山椒が運ばれてきた。

こちらの山椒は、飛騨高山産。

女将さんから「こちら山椒は風味が強いので、あまりかけ過ぎないようにお気を付けください」とのアドバイスを頂く。

いよいよ「特上うな重」のご登場だ。

ウナギはぷっくりとして身が厚く、特大サイズ。

実によく肥えていらっしゃる。

もう見た目からいいウナギを使っていることがビンビンに伝わってくる。

これは文句なしに特上だ。

重箱は、高さも幅も十分な大きさがある。

しかし、この特大のウナギにとってこの重箱の上は窮屈すぎるのか、身が重なって乗せられている。

ウナギが、いや「幸せそのもの」が重なりあっている。

緑茶とは別に、食事用のほうじ茶が届けられた。

湯吞みは青。

いやこれは青というよりも蒼。

深い色合いが美しい。

この照り、このツヤ。

深く飴色に輝いている。

ウナギの身にはほんの少しの身崩れも歪みもなく、串打ちの跡すらもなく、どこまでも端正。

こんなにも美しく焼き上げたウナギを見るのは初めてだ。

さて当然のことだが、ウナギを食べるために箸を入れなければならない。

しかし、この見事に仕上がったうな重に箸を入れることがどうしても躊躇われる。

はたして「食欲を満たす」という非常に原始的な欲望のためだけに、この繊細で美しいうな重に箸を突き立てるなんて、そんな蛮行が許されるのだろうか?

そんな身勝手な行為は、素晴らしい芸術作品にペンキをぶちまけて台無しにするような行為なのではないのか?

ああ、なんて罪深い、業の深いこと。

このうな重は、きっと大英博物館とか、スミソニアン博物館とか、ルーブル美術館とか、そんなところで大事に大切に保管して、そして後の世の人々へと伝え残すべき文化遺産だ。

そう思うと畏れ多くて、とてもじゃないが箸を入れるなんてことはできない。

 

が、食欲には勝てない。

ビビりながらも端っこのほうに箸を入れると、ウナギの身は すぅー・・・ と、なんの抵抗も見せることなく箸を受け入れて、静かに身が分かれる。

そのまま箸で持ち上げると、ふっくらと肉付きの良いウナギはふるふると身を揺らす。

身が崩れないように、慎重に、慎重に口へと運ぶ。

 

・・・

 

うんまーーーッッ!!!!

よく知られていることだが、ウナギの蒲焼は、関東風と関西風の2つの調理方法がある。

関東風は調理の過程で「蒸し」が入るのに対して、関西風では蒸さず「焼き」のみで火を通す。

この調理過程の違いはおもに食感に表れる。

関東風は蒸すことでウナギから余分な脂が落ち「ふっくらと軽い」蒲焼となり、蒸さない関西風は「パリっとしてこってり」とした仕上がりになる。

この店のウナギは、まさに関東風の真骨頂。

ふっくらと焼き上げた蒲焼は、ウナギの旨味と風味が口の中でいっきに爆ぜる。

こりゃ美味い。

関東と関西の蒲焼きには違いがもうひとつ。

関東ではウナギの背中側に包丁を入れて開く「背開き」だが、関西では腹側から開く「腹開き」

これは江戸が武士社会を中心とした文化であったため、腹側から包丁を入れる腹開きは「切腹を思わせる」ものとして忌避され、そのせいで背開きが好まれるようになった。

いっぽう関西は商人が文化の中心的な存在。

商人たちは「商売のためにお互いに腹を割って話そう」という思いから、ウナギも腹側から開く「腹開き」が定着した。

 

なんて話もあるけれど、でもなんだか後付けの理由っぽくて、ちょっと眉唾だ。

ご飯は米の粒感がはっきりと感じられる炊き上がり。

山椒を使ってみよう。

最初こそは箸を入れることに躊躇していたが、しかし、いったん食べ始めてしまうとどうにも箸が止まらない。

もう欲望に歯止めがかからない。

ウナギは2段重ねになっていて、ご飯の中にもウナギ仕込まれている。

ご飯も含めるとかなりのボリュームで1.5人前かそれ以上の量がある。

特上ウナギのギガ盛りだ。

こちらは『肝吸い

ウズラの卵と、三つ葉と、素麺。

三つ葉の香りが

表面に浮いている赤、黄色、白、緑の粒はてっきりアラレだと思っていたら、コレは・・・なんだろう?

たぶんアラレではない。

コンニャクっぽいクニっとした食感がある。けれども、もしコンニャクであれば椀の表面には浮かばずに沈むはずだから、うーん、コレってなんだろう?

キモっ!

お漬物はキュウリ、奈良漬け、タクアン、白菜、ゴボウ。

キュウリは浅漬けと古漬けの2種類。

お漬物に対するこだわりが現れている。

こりゃ丹精ってやつが込めれているぞ。

先ほど「ウナギ屋で待つのが好きだ」と書いた。

ここであらためてその理由をご説明したい。

【1つ目の理由】

ウナギ屋になんて、なかなか来ることができない(おもに経済的な理由で)。

だから、めったに入れないウナギ屋に来たのだから、その「空間」とそこで「過ごす時間」を目いっぱい堪能したい。

飽きるまで堪能し尽くしたい。

【2つ目の理由】

こちらの理由が特に重要だ。

しかし、これがちょっと分かりにくい理由かもしれない。

その理由をちゃんと説明するため、そしてしっかりとご理解いただくためにも、まずその前段としてタメ技というものについて話しておきたい。

タメ技とは、おもに格闘ゲームなどに登場する技の種類。

代表的な例としては『ストリートファイター』に登場するキャラクター「ガイル」が使うソニックブームサマーソルトキックなどだ。

通常、タメ技というものは「力をチャージする時間(=待ち時間)」が発生する。

このためにはコントローラーの十字キー(またはレバー)を一定方向に入力し続ける必要があり、その間は操作するキャラクターの行動が大きく制限される。

また、それゆにえ隙が大きくなるため、敵の攻撃を受けやすくなる。

しかし、そのリスクと引き換えに、タメ技は通常の技よりも攻撃力が非常に高く、不利な戦局を一気にひっくり返したり、またとどめの一撃となるフィニッシュブロー的な性格を持つ。

マンガ『ドラゴンボール』において、主人公の孫悟空が使用するかめはめ波も一種のタメ技だ。

腰の脇あたりで両の手を構えて「かーめーはーめー・・・」とエネルギーをタメ、両手を前面に突き出すと同時に「波っーーー!!!」と、タメたエネルギーを敵に叩きつける。

これがじつに良い。

タメてタメて、・・・それから一気にぶっ放す、あのキモチ良さ。

この醍醐味。

ウナギの焼き上がりを待つという行為は、必殺のタメ技における「タメ」の部分と同じなのだ。

ウナギの焼き上がりを待ち、さらに待って、そして待ちに待って、それからようやく食べるうな重の美味さよ・・・

さんざん待つからこそ、いざ「うな重」を食べた時の喜び、感動はひとしおだ。

我慢して我慢して・・・んー、まだまだ我慢して・・・

 

ッ撃てーーーーッッッ!!!

 

ああ、この喜び、この解放感、このエクスタシー。

この瞬間が好きなのだ。

そのために、ウナギを注文してから焼き上がるのをひたすら待ちたいのだ。

でも、店側から見れば「待たれる」ってのは迷惑な話かもしれない。

たとえば客の回転率という観点から言えば「ちゃっちゃと食事を済ませてもらい、とっとと次の客と入れ替わってもらう」方がだんぜん効率的だ。

ウナギが焼き上がるまでの40分~50分もの間、1人の客に席を占有されてしまっていては回転率が悪くなる。

そう考えると予約をしてからお店に行く方が、客も店も待ち時間が無くなり、お互いWin-Winなのではないか?

ああ、心が葛藤する。

ひょっとして、ウナギ屋で「タメ技」的なエクスタシーを求めることは間違っているのだろうか?

人の道を外れる行為なのだろうか?

いいや、違う。

「ウナギ屋にエクスタシーを求める」ってことは、人間にとってごくごく当たり前のこと。

先の例に挙げた『ストリートファイター』や『ドラゴンボール』が世界中で記録的なヒットをしたという事実から考えるに、おそらく「タメ」からの「ぶっ放し」という流れは、国家や民族や文化や風習や思想などの枠組みを超えて、人間に普遍的に備わっている欲求であることは間違いない。

なんなら基本的人権のひとつといっても過言ではないだろう。

でもやっぱり、あらかじめ予約をしてから来店した方が圧倒的にスムーズなのは間違いない。

事実、私よりも後から入店した家族連れのお客さんは、来店前に予約していたため入店して5分ほどで配膳、そして食事を済ませて出て行った。

じつにスマート。

さて、みなさまご存じ『ガールズアンドパンツァー(通称ガルパン)

その劇中において、大洗女子学園カバさんチームのエルヴィンは言った。

「自分の人生は、自分で演出する」

ああ、まさにその通り。

この言葉の元ネタは、彼女のモデルとなったドイツの軍人エルヴィン・ロンメルの「自分のショーは自分で演出する」というものらしいが、いずれにせよ素晴らしい言葉であることに違いはない。

そこで私もひとこと言わせていただきたい。

オレのウナギは、オレが演出する

せっかく安くはない金を払って食べるウナギなのだから、より劇的に、そして最大限の演出をしたい。いや、するべきだ。

そういえば、ガルパンのエルヴィンは茨城県つくば市の出身だった。

特大サイズのうな重は、永遠に無くならないような気さえしていたが、さすがに食べ続けていればやがては無くなる。

そろそろ特上うな重も終わりの時を迎える。

最後のひとくち。

忘れずに山椒を振って、噛みしめる。

うん、うんめぇ。

食後にお茶のお替りを頂く。

アツアツのお茶を飲みながら、あらためた店内を見てみる。

余計な装飾品が置かれていない店内は非常にシンプル。

だが、言葉を選ばずに言うと、少しばかり殺風景な印象も受ける。

たとえばこのカウンターの椅子。

このプラスチックと合金製の椅子は、ちょっとオフィスの事務用品のような感じがしてちょっとばかり興が削がれる。

いや、座り心地はぜんぜん悪くはないのだが。

きっとこの店は新しいスタイルのウナギ屋を目指しているのだろうと思う。

既存の古いウナギ屋とはまったく違う新しいスタイルのウナギ屋だ。

その志は店の内装や、若女将のユニフォームなんかにも現れている。

関東風ウナギの蒲焼の技術とその伝統を守りつつ、より現代にアジャストしたウナギ屋。

きっとそこを目指していて、今はまだその途上なのかもしれない。

いずれにせよ、ウナギの美味さは間違いない。

しかし私の住んでいる「ひたちなか市」から、ここ「つくば市」までは、高速道路を使っても1時間ほどの距離があるため、なかなか頻繁には通えない(というか、そんなお金もない)が、関東風に焼き上げたふっくら柔らかな蒲焼はとてつもなく絶品だから、ぜったいまた食べに来よう。

うなぎ桐の情報

うなぎ桐の場所はこちら

 うなぎ桐の基本データ 

 住  所 

 〒305-0062 茨城県つくば市赤塚449ー1

 電 話 

 029-869-9220

 営業時間 

 11時30分~14時30分
 17時00分~21時00分

 定 休 日 

 火曜日

 Web 

  公式HP

  twitter

うなぎ桐のメニュー

※ 価格は2021年のもの。

 うなぎ桐のメニュー 

 うな重 

 並
  4,070円
 上
  5,170円
 特上
  6,270円

 一品料理 

 白焼
  4,400円
 蒲焼
  3,850円
 肝吸い
    220円
 ライス
    220円
 味噌汁
    220円
 茶碗蒸し
    880円
 きも煮(数量限定)
    990円
 うざく
  1,760
 柳川鍋(数量限定)
  1,980円
 お通し
    440円

 ソフトドリンク 

 コーラ
    300円
 三ツ矢サイダー

    300円
 ビワミンソーダ

    400円
 山梨県産100%ぶどう

    400円
 山梨県産100%桃

    400円

 ビール 

 中ジョッキ
    600円
 グラス

    400円
 エビスビール中瓶

    650円
 スーパードライ中瓶

    600円
 ドライゼロ小瓶

    400円

 その他、サワー、ハイボールなど

 日本酒 

 羽根屋 純吟煌火(一杯)
    700円
 水芭蕉 翠 純米大吟醸(一杯)
    700円
 緑川 純米(一杯)
    700円
 一代弥山 スパークリング(飲み切りボトル)
  2,500円

 焼 酎 

 うなぎ桐(ボトル)
  2,000円
 うなぎ桐(グラス)
    400円
 赤蟻(ボトル)
  3,500円
 赤蟻(グラス)
    600円
 蟻(ボトル)
  2,800円
 蟻(グラス)
    550円
 鳥飼(ボトル)
  4,000円
 鳥飼(グラス)
    650円