どの街にも地元の人々に長く愛され続けている店がある。
その街に住む人々の胃袋を安くて美味い料理で満たし、住民たちのQOLの向上に多大な貢献をする。
その存在は、電気・ガス・水道などのライフ・ラインと同等。いやそれ以上だ。
もはや生活に欠かすことができない地域社会のインフラだ。
今回ご紹介する『ちんや食堂』も地元の人々から長く愛されているお店の1つ。
やぁ諸君、ごきげんよう。
ぼっちメシ研究所のジャムだ。
ちんや食堂
茨城県日立市久慈町。
この海沿いの町にあるのがちんや食堂だ。
店は大きな通りには面しておらず、通りから住宅地の中へと入った場所にある。
お店の外観
風に煽られめくり上がったのれん。それに店先に停められている出前用(?)のスーパーカブがいかにもって雰囲気をプンプンと漂わせている。
食堂といえばコレって感じの完璧な出で立ち。
店内の様子
入り口には消毒液が設置されていた。
店内は清掃がすみずみまで行き届いていてとても清潔に保たれている。
店に入ると特に出迎えや席への案内はない。
4人掛けのテーブル席が4つ並んでいる。
とりあえず空いているテーブル席に腰をおろすと、奥から女将さんが出てきて「いらっしゃいませ」とお茶を持ってきてくれた。
店内では、おそらくこの家のお嬢さんなのだろうか、小学校に上がる前くらいの小さな女の子が遊んでいた。
座敷は6人掛けが3卓あるが、一番奥の席はご令嬢が学問に励むためのスペースに充てられている。
しかし肝心のお嬢様はといえば、快活過ぎていらっしゃるためか、常に店内のあちらこちらを駆け回っているばかりで、いっこうにご勉学には身が入らないご様子。
なにはなくとも、まずはメニューを拝見だ。
ほとんどのメニューが1,000円未満で、およそ500円から800円がメインの価格帯。
非常にお手頃。
それにしても、醤油ラーメン450円ってすごいな。まるで昭和の値段だ。
裏面は定食メニューとお飲み物。
オムレツ、エビフライ、ポークソテーなど洋食よりのラインナップ。
ここちんや食堂の売りは釜めし。
五目、とり、かに、ウナギと、ツボを押さえた釜めしは、そのどれもこれもが魅力的。
釜めしは提供まで約20分ほど時間がかかることが記載されている。
どの釜めしにしようかとアレコレ悩んでいると、壁に張り出されたしらす釜めし(850円)を発見。
おすすめメニューだそうなので、コレに決定だ。
プラス100円で大盛りで注文した。
濃ゆい緑茶を飲みながら釜めしが出来上がるのを気長に待つ。
やがてぼっち青年が来店して左隣のテーブルに座り、カツカレーの大盛りを注文。
それから間もなく作業服を着た5人連れの男性グループがやってきて、右隣のテーブルについた。
5人は各々が好きなメニューを注文し、それに加えチャーハン大盛りを2つ注文。
その注文を受けた女将さんが「チャーハンはみんなで食べるの? スプーンは5つあったほうがいい?」と気をつかう。
どうやらチャーハン大盛り2人前は、5人みんなでシェアするようだ。
その発想に驚いた。私のようなぼっちにはとても思いつかない発想。
ナイスアイディア。
シラス釜めし(大盛り)
メニュー内で予告されていた通り、およそ20分ほど待ってから釜めしが到着した。
釜めしには、味噌汁とお漬物が付いてくる。
フタを取り、不用意に釜の中を覗き込むと、中から大量の湯気が噴き出す。
あっ・・・熱ッッ!!
釜から勢いよく噴き出した湯気を顔面いっぱいに受けて悶絶。
それにしても、ものすごい量の湯気。
なんなら、美顔スチームの代わりにもなりそうなほどの湯気の量と勢いだ。
なるほど、ということは釜めしには美顔効果も期待できるってことか。
そういえば、気のせいか釜めしの蒸気を顔に浴びてから、なんだかお肌にハリとツヤが出た気がする。
具材は釜のふちギリギリいっぱいまで盛られている。
とくにメインとなるシラスは、かなり景気よくたっぷりの盛り。
しかしテーブルの上に置いた釜めしはその位置が高すぎて、ちょっとばかりご飯が取りにくく、分厚いシラスの層をかき分けると、何匹かが釜の外へとこぼれ落ちてしまった。
さっそくお茶碗にご飯を盛ると、これがさらにたまらなくいい匂い。
出汁で炊いたご飯。この出汁はたぶん昆布でとったのかな。
それにプラスして醤油に日本酒、それに三つ葉の爽やかな香りに心がくすぐられる。
さっそくひとくち頬張ると、これが案の定めちゃくちゃ美味い!
炊き立てのご飯に、たっぷりシラス。
この組み合わせ、相性が良すぎるぞ!
いやそれにしても、炊きたてのご飯ってホントにイイもんですわぁ。
お漬物は白菜とたくあん。
味噌汁は豆腐とワカメ。
さて、釜めしの最大のお楽しみといえば、それは何といってもおこげ。
釜の底に焼き付いた飯粒をシャモジを使ってこそぎ取る。
出汁と醤油の焦げた香り、それにまるで煎餅のようにカリッカリでパリッパリに焼けたお米。
これがもう香ばしくって・・・もぅ香ばしくってよぉぉぉおぉッ!!
お茶碗にしっかりと山で盛って約4膳半、いやそれ以上あるかも。
掘れど、食べれど、釜の中の飯はなかなか減らない。
そのせいか、後半はちょっとだけ持て余す。
できればもう一つ小鉢かなにかを付けてくれると嬉しいのだが、それはコスト的に難しいのかもしれない。
釜めしを食べ終えると、隣のテーブルに座った青年食べているカツカレーの香りにそそられた。
たった今、持て余すほどの釜めし食べたばっかりだというのに、カレーのいい匂いが食欲を刺激しやがる。
うーん、よし、次回はカツカレーを食べてみよう。
カツカレー(大盛り)
数週間後、再びちんや食堂を訪れて、カツカレー大盛り(900円)をオーダー。
5分少々でカツカレーがやってきた。提供が早い。
ぶっちゃけカレーなんて料理は家でもそこそこ美味しい物が作れるし、それにスーパーで安売りされているレトルトのカレーでも十分に美味い。
だから外食してまで、わざわざカレーを食べるなんてことはしない。
しかし、それがカツカレーとなれば話は別だ。
昨今、街に増え続けているインド・ネパール系の本格的なカレー屋さんに押され、古式ゆかしい日本式のカレーは徐々にその存在感を失いつつある。
その日本式のカレーの復権のカギは、このカツカレーという料理が握っている、と思っている。
その根拠は?
いや、別にこれといった根拠はない。
しいて言えば、本格インドカレーの店ではカツカレーを出さないから。
カツカレーとは、カレーとトンカツという誰もが大好きな2大ヒーローが1つの皿の上で競演する夢のステージ。
この舞台ではカレーとトンカツ、そのどちらか片方だけが前に出すぎてはいけない。かといって引っ込み過ぎてもいけない。
そんなスリリングで危ういバランスの上に成り立っているのがカツカレーという奇跡の料理なのだ!
ワカメスープ。
色が濃く見えるのは器の底にたっぷりとワカメが沈んでいるから。
ネギとワカメと具材はシンプルながら、これがめちゃくちゃ美味いんでビックリ!
小さな器の中に、人類誕生から今日までの600万年という長い時間をかけて積み上げてきた知恵のすべてが詰まっている。
それにしても美味いな、コレ。
あからさまに赤い福神漬けは、合成着色料の存在を隠そうともしていない。
それがもうね、いいんだよね。
やっぱ、福神漬けってのは赤くなくちゃだ。
合成着色料は健康に良くないだって? そんなの上等よ!
カツはの厚みは約1センチ。
けっしてお世辞にも肉厚とは言えないが、カツカレーのカツってのはこれくらいがちょうどイイ。
しかも作り置きではなく、揚げたてでサックサク。
これ以上の高望みをしてはバチが当たるってなもんだ。
カレーの具材は玉ねぎとブタバラ肉で、ルーはやや甘口な仕上がり。
甘酸っぱくて、ほんのりスパイシーなトンカツソースが良くあう。
カツカレーを食べるたびに、心の中に浮かび上がるある疑問がある。
それは「人間と他の動物たちとの違い」とは何だろうか? って疑問だ。
いったい人間を人間たらしめる要因とは何なのだろう?
人間と、他の動物たちとの違い。
その違いとは、いったい何だろう?
それは、人間だけが持つ理性や知性だろうか?
それとも、火や道具を使うところだろうか?
それとも、言葉を使ったコミュニケーション能力だろうか?
いや・・・
残念ながら、そのどれでもない。
人間と他の動物たちとを隔てる違いとは、そんな些細なものではない。
たとえば、サバンナに生息する野生のチーターは、インパラやガゼルの群れを襲い、そして捕食する。また時には幼いシマウマの子供にも容赦なく襲い掛かる・・・
チーターは、ただ自らの本能に従って草食動物たちを狩り、そしてその肉を喰らい、腹を満たす。
その行為は一見すると、とても非道で残酷な行為のようにも思えるが、しかしそれが野生動物たちが生きている弱肉強食という世界。
しかしそんなチーターも、けっしてカツカレーの群れや、ましてや生まれたばかりで、まだよちよち歩きのカツカレーの赤ちゃんに襲い掛かるようなことはしない。
いかにチーターとはいえ、そんな無慈悲はことはしない。
その証拠に、いまだ世界中のどこからもそのような目撃例は報告されていない。
いや、これはなにもチーターだけに限った話ではない。
百獣の王ライオン、冬眠から覚めたばかりのヒグマ、血に飢えたサメ、死肉を求めるハゲタカ・・・
驚くことに、それらのあらゆる野生動物たちはみな、カツカレーを食べないのだ。
ところが、だ。
ところが人間だけは違う。
人間だけは、カツカレーを喰らう。
地球上に存在するありとあらゆる生命体のなかで、唯一人間だけがカツカレーを食べるという事実。
もう私が何を言いたいのかお分かり頂けていることだと思う。
そう、カツカレーを食べることこそが、人間と他の動物との決定的な違いなのだ。
カツカレーを食べるという行為は、神がわれわれ人間だけに与えたもうた特権。
カツカレーを食べることこそが人間の証明。
え? 何を言っているのか分からない、だって?
大丈夫だ。
私自身も、何を書いているのかよく分からない・・・
とにかく人間らしくカツカレーをむさぼり、誰へともなく人間の証明をしまくった。
会計のためレジの前に立つと、ちょうど出来上がったばかりの五目そばを持った女将さんと鉢合わせた。
その五目そばが、これまたやたらと美味そうだ。
よし、次回は五目そばを食べてみよう。
五目そば
風に揺れるのれんが、優しく手招きをして店内へと誘っているかのよう。
心躍らされる、じつに素晴らしい光景だ。
注文したのはもちろん五目そば。
10分ほどで到着。
大きなドンブリが、景気よく湯気を噴き上げている。
麺がみえないほどドンブリの表面を覆いつくす大量の具。
タケノコ、シイタケ、カマボコ、ゆで卵、鶏肉、エビ。
それにタマネギと大量のキャベツ。
おいおいおい、これ五目どころか八目も入ってんじゃん!
この店はあくまで食堂。
ラーメンの専門店ってワケではないので、さすがに一から出汁を取って自前のスープを炊いているってコトはないだろう。
つまりはたぶんスープは業務用のものを使っているものと思われる。
しかし、キャベツの甘みがたっぷりと染み出した塩ベースのスープは、それでも十分に美味い。
スープの甘みの源泉となっているたっぷりのキャベツは、けっこうクタっとなるまで煮込まれている。
色鮮やかな具材の数々。
麺量はおそらく160グラムくらいか。
しかし麺はやや茹で過ぎていて、その食感はちょっとばかり残念。
もし、長崎チャンポン的な仕上がりを目指しているのなら、麺はもうちょっと太めの方がいいかもしれない。
というわけで、こいつの出番。
やや甘めのスープにホワイトペッパー振り掛けて味を引き締める。
勢いよくズズズっと麺をすすり上げると、何故かユルめの麺もこれはこれで悪くはないような気もしてくる。
なにしろ体が暖まる。
カニ釜めし
この日はカニ釜めし。
略してカニカマ。
略し方を盛大に間違えている気がしなくもないが、まぁ気にしないことにする。
前にシラス釜めしを大盛りで注文したときは、その圧倒的な飯の量に少々手こずったので、今回は普通盛りでオーダー。
20分ほどで到着。
今回もまた不用意にフタを開けたため、たっぷりの美顔スチームを顔面に頂戴する。
あ・・・あ、熱ッッッ!!!
前回のシラス釜めしの時には写真を撮り忘れていた空のお茶碗。
普通盛りは、この茶碗にたっぷりと盛って約3杯分くらいの分量がある。
にしても、ものすんごくイイ匂い!
このブログに写真を載せることを考えて、見栄えを良くカニが上にのるように盛ってみた。
でもおそらく本当は、最初に釜の中でよく混ぜたほうが最後まで美味しく頂けると思う。
ネギ、豆腐、ワカメの味噌汁。
そしてお漬物。
釜の中にはまだたっぷりのご飯。
とにかく最初に良くかきまぜるべし。
それとフタはまめに閉じるべし。
ありがたいことにカニがけっこう多めに入っている。
もちろんカニカマなんかじゃなくって、ちゃんとしたモノホンのカニだ。
それにしても、うっひー! 美味い!
しかし釜めしってのは、どうにも絵的な変化に乏しい。
なにせ茶碗に盛ったメシだから。
ついでに味の変化も乏しいのだけれど、それでもガツガツと食べてしまうのは、きっと出汁と米が良いからかも。
最初に良くかき混ぜなかったので、最後の一膳はほぼカニがなくなってしまった。
でも大丈夫。
美味しいお漬物があるから。
2代目と思われる男性が、こまめにお茶のお替りを奨めてくれる。
最初にシラス釜めしを食べに来た時に、店内でお勉強していたお嬢さんのお父様だろうか。
どうかいつまでも続けてほしい。
ちんや食堂の基本情報
ちんや食堂の場所はこちら
駐車場はお店のとなりに6~7台分。
ちんや食堂の基本データ
住 所
〒319-1222 茨城県日立市久慈町3丁目12−17
電 話
0294-52-3347
営業時間
11時00分~14時00分
17時00分~20時00分
定 休 日
ちんや食堂のメニュー
※ 価格は2021年のもの。
税込み価格です。
※ カッコ内は大盛りのお値段
五目釜めし
800円(900円)
とり釜めし
800円(900円)
かに釜めし
900円(1,050円)
うな釜めし
1,100円(1,200円)
御飯類
※ カッコ内は大盛りのお値段
チャーハン
550円(700円)
チキンライス
600円(750円)
オムライス
700円(850円)
カレー
550円(700円)
カツカレー
800円(900円)
丼もの
※ カッコ内は大盛りのお値段
玉子丼
550円(650円)
親子丼
600円(700円)
豚丼
600円(700円)
かつ丼
650円(750円)
かつ重
850円(950円)
麺 類
※ カッコ内は大盛りのお値段
醤油ラーメン
450円(550円)
味噌ラーメン
550円(650円)
タンメン
550円(650円)
五目そば
650円(750円)
チャーシューメン
650円(750円)
冷やし中華
700円(800円)
定 食
※ カッコ内は単品でのお値段
オムレツライス
700円(550円)
野菜炒めライス
700円(550円)
生姜焼きライス
850円(700円)
カツライス
800円(650円)
上カツライス
1,050円(900円)
海老フライライス
1,050円(900円)
ポークソテーライス
1,050円(900円)
ランチ
1,150円(1,000円)
上ランチ
1,350円(1,200円)