諸君、ごきげんよう。ぼっちメシ研究所の所長ジャムだ。
この週末、裏磐梯の老舗のキャンプ場、ママキャンプ場で秋の一日を満喫してきた。
普段の研究レポートが座学だとすれば、今回はいわゆるフィールドワークということになる。
あらかじめぶっちゃけておくと、この記事はランチの参考になんてならないと思う。
つまり、このレポートは、ただのぼっちが茨城県の片田舎を飛び出し、福島県の片田舎で秋の週末を過ごしたという駄キャンプレポートだ。
しかも無駄に長い。
ひたちなか市や裏磐梯のランチについて、何かしらの有益な情報を求める方たちには、とてもオススメできるような内容ではないことをお断りしておく。
旅のしおり
10月20日の早朝。私は近所のコンビニの前に立ち、お稲荷さんを片手に呆然としていた。
時刻は午前4時を少し過ぎたころ。
この時すでに、私が起床した午前2時30分から1時間半の時間が経とうとしていた。
喜多方ラーメンと朝ラー文化を現地調査するのが旅の目的
私の旅の目的地は喜多方ラーメンで有名な福島県の喜多方市。
さて、諸君はご存じだろうか?
喜多方市には朝ラーと呼ばれる習慣がある。
アラサーではない。アサラーだ。
喜多方市に星の数ほどあるラーメン店いや、星の数より多いラーメン店は、午前7時になると店先に暖簾をかかげ営業を開始する。
何故そんなに早朝から?
それは、喜多方市民は朝早くから我先にとラーメン店に殺到し、朝食としてラーメンを貪り喰らうからだ
私たちが認識する日本の朝食といえば、炊き立てのご飯とみそ汁。それに鮭、卵、納豆、焼き海苔。
しかし、そのテンプレをガン無視するかのような喜多方スタイル。それが朝ラー。
実に興味深い奇習。ぼっちメシ研究者としての研究心がくすぐられるではないか。
私の旅の計画
私が当初に立てた計画では、午前4時にはこのひたちなか市を出発し、約3時間ほどのドライブを経て、午前7時には喜多方市にて朝ラーを堪能する。というものだ。
すでに前日のうちにキャンプ道具一式はパッケージングが完了していて、目が覚めたら荷物を車に詰め込んですぐに出発だ。
しかし、すでに当初予定していた出発時刻の午前4時だというのに、どうしたことか、私はのんきにも自転車でコンビニに来てお稲荷さんなんぞを買っている。
なぜ出発しないのか?どうしてこんなコトになったのか?
まずはその事情を説明させてほしい。
こうなったのには、やむにやまれぬ事情があったのだ。
その朝、午前2時30分に目を覚ました私は、すぐにシャワーを浴び、とびきりに濃いコーヒーを入れた。コーヒー飲み終えるまでの間、この休日を存分に楽しむための前準備として、寝ている間に届いていた大量のメールを処理してしまおうと思い立った。
メールを捌きだしてすぐ、私の関心を強烈に引きつける一通のメールが目に飛び込んできた。
悪魔からの知らせ
ウィッシュリスト内のアイテムがセール中です!
メールの差出人はsteamだ。ご存じだとは思うがsteamとはネット上でゲームを販売しているサイトのことだ。
steamから届いたメールによると、私が以前から欲しいと思っていたゲームが値を下げてセール対象商品になったという。いますぐにこのゲームを買えば、私の幸福度は最大限まで上がるそうだ。
今すぐに旅に出かけ、帰ってきてみればセールは終わり、なんて事態はよろしくない。できれば避けたい。
メールに記されたリンクをクリックし、すぐさま購入の手続きを行う。私はゲームのダウンロードが完了するのを待った。
その時だ。
まさにその時、悪魔(デーモン)があらわれたのだ。
悪魔は私の耳元で そっ と囁いた。
「ねぇ、そのゲーム、ちょっとだけやってみたら?」
どうか、この後のことは察してほしい。
やがて時は過ぎて
悪魔の誘惑に屈して1時間ほど経ったころ、コーヒーの刺激によって目覚めた私の胃袋は、グーグーと不満の声を漏らし始めた。
とてつもない空腹感。
このバッド・コンディションではとても朝ラーまでは持ちそうもない。
第一に、この飢餓状態では喜多方市までの約3時間のドライビングにも支障をきたすことは必須だろう。
ここは何かちょっとしたもの。そう安全なドライブのためにも、何かちょっとしたモノを小腹に入れておくべきだ。
「それじゃ、ちょいとそこのコンビニまで行ってこようかな」
旅立ち
悪魔に魅入られてしまった私が正気を取り戻したのは、お稲荷さんを買いコンビニでを出た直後。冷たい秋の雨が頬を打ったその時だった。
「おいおいおい、いったい私は何をしているんだ・・・?」
とたんに我に返り、せっかく早起きしてまで作った時間的なアドバンテージが無駄に浪費されていることに、いまさらながら気づいた。
「いつものように駄々らに過ごす週末を繰り返すつもりなのか?」
少しばかり当初の計画は狂ってしまったが、とっとと、このお稲荷さんを腹に詰め込み、大急ぎで荷物を車に投げ込めば、おそらく午前5時には出発できるはずだ。
ここまでのタイムロスは1時間。
いやなに、まだ焦る必要はない。時間は十分に残されている。
5時に出発すれば、3時間後の午前8時には喜多方市に入って堂々の朝ラーだ。
それから3時間後の午前8時
そして、3時間後の午前8時─────
時刻は午前8時になり、私はやっと喜多方市に向けて、ひたちなか市を出発した。
もうすでに、当初の出発予定時刻の午前4時から4時間も遅れて午前8時に出発したというわけだ。
もちろん、これにも正当な理由がある。
お稲荷さんを食べたら、なんだか急に強烈な眠気が襲ってきた。
これもきっと悪魔の仕業に違いない・・・
2度寝しちゃうのも当然だ。
言わばこれは、人間であれば誰しもが持つ業(カルマ)というもの。
いったい誰が私を責められようか?
まずは何よりも安全なドライブを第一に考え、十分な睡眠をとることを優先した結果、4時間遅れの出発となった。
道中に通った天栄村。
このあたりは風景がとてもよい。
猪苗代湖。
風が強く、雲が多い。
これは去年(2018年)の写真。
この時は天気に恵まれた。
猪苗代湖から見た磐梯山。
これも去年(2018年)の秋の写真。
途中のホームセンターに立ち寄って買い出し。
焚き火用に薪とたきつけ(着火剤)を購入。
駐車場からみた風景。
四方を山に囲まれたいわゆる盆地。
雲が山を覆う。
裏磐梯へ
私の柔軟な思考回路は、すでに喜多方ラーメンの朝ラーをあきらめている。
喜多方市に到着するのは昼に近くになりそだ。たとえお昼に喜多方ラーメンを食べても、それは決して朝ラーにはならないだろう。
今、私が目指しているのは裏磐梯の桧原湖(ひばらこ)にある食堂、田舎のまんま屋 めだかのがっこだ。
めだかのがっこの山塩ラーメン
めだかのがっこは、すでに廃校となった桧原小中学校の校舎を再利用して造られた食堂だ。
この店で最初に食事したのは、たぶん2年前の秋だと思う。
初めて店に入ったその日、お店一押しメニューの山塩ラーメンを注文した後、店内のテレビをボンヤリと見ていた。
ほどなく運ばれてきた山塩ラーメンは、檜原湖のように透き通った塩スープに縮れた麺。その上には鶏チャーシューとなんかの豆がさやごと載っている。
鶏スープの美味そうな香りと、豆の青臭い香りは、たまらなく食欲が刺激される。
麺は喜多方市から取り寄せているという。喜多方ラーメンの特徴となっている平打ちの多加水麺。
山塩というシンプルな味付けは、鶏の旨味たっぷりのスープと抜群に相性が良い。塩と鶏。これ以外には考えられない最高の組み合わせ。
美味い。
この山塩ラーメンに私の心と胃袋は一瞬で持ってかれた。思いもよらない素晴らしい出会い。
ちなみに、山塩とは大塩温泉の温泉水を煮詰めて作られている塩だという。
で、その山塩ってのは海塩とどこがどう違うのか?
その疑問の答えは、会津山塩企業組合のサイトにある。
「山塩とは」海の塩じゃないから、何かがちがいます。
出典:会津山塩企業組合
なるほどー。
山塩は何かが違う。それが分かっただけも大収穫だ。
たいへん勉強になった。
めだかのがっこに訪れた大きな変化
前回、私がこの店を利用してから今日までの間に、ある大きな変化がこの店に訪れていた。
その変化とは、このめだかのがっこに、仙台出身の好感度No.1人気のお笑いタレントの2人組が、番組ロケでこの店を訪れていた。
レガシーメディア、テレビ。しかし依然としてテレビの影響力は文句なしに強力。
人気の2人組の訪問により、めだかのがっこは大人気店となっていた。
後にgoogle mapのレビューを調べてみると、案の定お客が大挙して押し寄せているようだ。
めだかのがっこに到着
めだかのがっこの開店5分前の駐車場に到着。
駐車場にはまだ車は1台も止まっていない。
「よッッッしゃ!」
あと5分も待つと私は、裏磐梯の人気店となっためだかのがっこの本日最初のお客様となる。
車を降りて、開店前の店の入り口に向かう。
「しばらくの間 お休みします」の張り紙。
めだかのがっこは、やってなかった・・・
我が恩師の言葉を借りれば「いやーん、まいっちんぐ」と言ったところだろうか。
テレビに出る前から知っている、めだかのがっこの姿。そしてテレビを通じて今や大人気店となった現在の姿。
私はその2つの姿を比較してレポートをお届けできるはずだったのだが・・・
めだかのがっこの場所はここ
腹へった
それにつけても腹がへった。
裏磐梯の秋の空に、腹の音が鳴る。
どうしようもなく途方に暮れるシチュエーション。
だが心配することは無い。私の計画には、二重、三重にバックアップが準備されている。
それはつまり、例えお目当てのお店がダメでも次の店。その次の店がダメなら、さらに次の次のお店へと、あらかじめ幾つかの美味しそうなお店をピックアップしている。
大人が立てる計画に、抜け目などない。
さっそくハンドルを切り、ここから15分ほどの距離にある次の店に向かう。
某所のカフェへ向かう
檜原湖は130年前の明治に生まれた自然湖だ。この湖はダムのような人造湖ではない。
この湖を一周すると約37kmほどになる。私が記憶している限り湖畔沿いの道にある信号はわずか1つ。
つまりここは、湖畔の木漏れ日の中をノンストップで走れる非常に心地よいドライブ・ウェイだ。
某カフェを目指し、その桧原湖畔の道をひた走る。
曲がりに曲がった道を駆け、細い細い道を登り上り、ようやく目的のお店の近くに到着。
しかし、駐車場と思しきスペースには「ここはお前が行こうとしているカフェの駐車場じゃないから。だからお前がここに車を停めたらブッコロスよ」的な事が書いてある。
「お前が乗って来たそのポンコツは、共同駐車場にでも停めときな」的なことも。
へぇ、なるほど、なるほど。
どやら駐車スペースに見えたここには、カフェの駐車場ではない。よって私の車を停めてはイケナイらしい。
で、その共同駐車場なる場所はどこかな?と辺りを見ると、あった、すぐそこだ。
しかしどうしたことか、この共同駐車場では裏まるしぇなるイベントが開かれている。野球場の内野くらいの広さの共同駐車場は、裏まるしぇというフリーマーケットの会場となり、いくつものテントで埋め尽くされている。
ここのどこに停めろと?
このあたり道路は、どこも山と湖に挟まれて、車を停めるようなスペースなんて確保できない。
それ故か、裏磐梯エリアは飲食店がすんごく少ない。
まさかここまで来ての手詰まり。
もはや私は海岸に打ち上げられたクラゲのように、ただ干からびて死ぬ運命を待つだけの身となった。
電池切れ
たとえ今からここ裏磐梯エリアを降りて、喜多方方面や会津方面、もしくは猪苗代方面に向かっても、その道中で餓死するのはほぼ確実だ。
「あぁ、父さん母さん、ぼっちメシの道半ばで餓死する事を、どうかお許してつかぁさい・・・」
と、そんなエセ福島弁の言葉が頭をよぎり、辞世の句でも残そうかとも思ったが、あいにくと筆と硯は私のキャンプ道具に含まれていない。
あてもなくゾンビのようにフラフラと檜原湖沿岸を車で彷徨う。
営業中の看板を見つけた
檜原湖を周回する道路でただ一つの信号機はもうすぐだ。
今日、ここ裏磐梯へ来たときにも見た信号機。
つまり私は空腹を満たすこともなく、いたずらに檜原湖をぐるり1周してきたってわけだ。
貴重な化石燃料、ガソリンを無駄にして。
信号を前にブレーキに足を掛けると、道端に営業中と書かれた立て看板を見つけた。
ここだ!
さっそく駐車場に車を滑り込ませ、店の様子を伺う。
この店の方向性が見えた。
山菜、きのこ、そして釜めし。
和食の店だ。
本日のランチは食堂 牛木屋
店に掲げられた看板には、食堂 牛木屋と大書されている。そしてその下には何故か何でか押し花のファンシーな文字。
押し花が気になる。
恐る恐る店に戸を引いて店に入る。
いいあんばいの店内。レトロ&ローカル感をフィーチャーした内装がたまらない。
お店の中にはすでにストーブが出ていて、懐かしい匂いがする。専門用語で言えばぬくい。なんだか歓迎されている気がする。
女将だろうか、店の奥からあらわれた女性から「どちらのお席でもどうぞー」とお声をいただいた。
どこに座っても良いといわれるとぼっちの身としては困ってしまうが、とりあえず窓際の一番端っこのテーブル席についた。
ぼっち、端っこ、落ち着く。
テーブルに置かれているメニューに目を通す。
こちとら腹が減っている。ここはたんと食べたい。
よって山菜そば+まいたけ釜めしのセットメニューCをオーダーした。
当初、喜多方の朝ラーを見込んでいた予算1000円をだいぶオーバーする。けっこう、強気のお値段設定。
「釜めしはお時間かかりますが・・・」とのことだったが、気にせずにオーダー。むしろ気になるのはお値段のほうだ。
釜めし系の値付けは強気。
それとは反対に磐梯そば、うどんの良心的な値付け。
食事の配膳を待つ間、数組の客が入って来た。
みな注文はまいたけ天ぷらそば。
1組の都会から来たと思われる若いご夫婦以外はみな地元の方々のようだ。
この店は、地元民からの支持されているみたいだ。
料理を待つあいだ、店内に無数にディスプレイされている押し花を何となく見てみた。
押し花って、本に生花を挟んでぺったんこにするヤツでしょ?くらいの認識でいたが、実際に目の前にすると、どれもこれもが素晴らしく、その美がハラペコ系ぼっちの感性に強く訴えかけてくる。
作りかけの押し花。
なにも知らない押し花の世界だけれど、きっと繊細な作業なのだろうな、ということは分かる。
今まで知らなかった押し花の世界に没頭していると、オーダーした料理が運ばれてきた。
オーダーから15分ほどで到着。
もっと待たされるのかと思っていたので、意外と早く届いた。
山菜そば。
残念ながら、蕎麦喰いとしてはあまり嬉しくないタイプの麺だ。
釜めし。
舞茸がいい感じではあった。
しゃもじを使って、お椀にもってみた。
具は舞茸を筆頭に、ニンジン、ゴボウ、コンニャク、タケノコ。
舞茸以外は何れも細かく刻まれている。
米はパラパラとしていて、粘りがないタイプの米。炊き込みご飯にはすこぶる相性が悪い。
ご飯を箸で摘まむと、ひと塊りとはならず、ポロポロと箸の間をすべり落ちる。
記号的な沢庵。
小皿にのった黄色いモノは、すべて沢庵なのだ。
かぼちゃの煮物。
兎にも角にも、餓死せずにすんだ。
心からお礼を言いたい。
店を出てふと見ると、空は厚い雲に覆われていた。
牛木屋の場所はここ
ママキャンプ場で過ごす秋の日
腹が収まったところで、ふたたび檜原湖を半周ほどして、本日の野営地ママキャンプ場へと向かう。
ママキャンプ場。
このママキャンプ場に通うようになって、すでに10年近い月日が流れた。
10年ほど前の夏に、キャンプとしては初めて裏磐梯を訪れた。5連泊の予定で他のキャンプ場に泊まっていて、せっかくなので付近のキャンプ場を順に見学しようと思った。
このキャンプ場もその一つ。
このママキャンプ場の管理人さんにお願いして、キャンプ場内を見させてもらった。
私はすぐにこのキャンプ場の抜群のロケーションに一発で惚れた。
すぐさま泊まっていたキャンプ場を引き払い、このキャンプ場へとテントを移した。
このママキャンプ場から見る磐梯山はすばらしい。福島県の観光案内やパンフレットには必ずと言っていいほどこのキャンプ場から望む磐梯山の写真が載っている。
CMの撮影に使われたこともあるほどの美しい風景。
人工物はほとんど目に入らない。日本の規格外のとてつもない大自然が目の前に広がる。
しかし、それにしても残念すぎるのがこの天気。
分かり難くて申し訳ないが、この草が短く刈り込まれている辺りが人気のサイト。
駐車場から近く、またトイレや洗い場にも近い。しかし、ここからは磐梯山を望むことはできない。
今日の先客は1組。
実は今年の5月の連休にもここに来たのだが、今まで見たこともないような数のテントでサイトは埋め尽くされていた。
最近はキャンプが流行っているらしい。それはそれで喜ばしいことだが、私がキャンプできなくなるのは困りもの。
キャンプ場内の陸地なら、どこにテントを張っても良い。ただし自己責任で。
その日は他のキャンプ場のいっぱいで、しょうがなく私は自宅への引き返した。
日本百名山のひとつ磐梯山。
磐梯とは、天に掛かる岩の梯子という意味だそう。岩の梯子の高さは1,816m。
我らが筑波山も日本百名山に名を連ねている。百名山で一番低い山、筑波山。
この磐梯山には表と裏がある。
南の猪苗代側から見る磐梯山が表。宝の山と言われる山。折り目正しき優等生。
一方、私が今日泊まろうとしているこのママキャンプ場があるのは、磐梯山の裏側。裏磐梯と言われるエリア。
檜原湖は130年前に人造湖ではなく、自然が作り上げた自然湖として生まれた。
現在の磐梯山は2つのピーク(峰)を持っていて、まるで地球が猫耳を付けたような愛らしい姿をしている。
しかし、130年前の磐梯山は3つのピークを持った山だった。
その3つのピークのうち磐梯山総選挙でファンからの圧倒的な票を獲得し、堂々のセンターを務めていたのが小磐梯という名の峯。
しかし、その小磐梯は人気絶頂のさなか、ある日突然ファンたちの前から忽然と姿を消した・・・
明治の大噴火。
磐梯山の噴火に伴って発生した大規模な山体崩壊は、小磐梯を火砕流と泥流に変え、ここに流れていた長瀬川がせき止めた。
せき止められて行き場をなくした水は、この写真に写る檜原湖をはじめ、約300もの大小さまざまな湖沼群をこの地に生んだ。
裏磐梯のこのママキャンプ場からは、その山体崩壊の生々しい傷跡を真正面に見ることができる。
大噴火によって荒野となった裏磐梯だったが、その後、遠藤現夢の手によって植林がなされ、現在の美しい裏磐梯となった。
私を含めた観光客で溢れかえる五色沼も、130年前の大噴火が作り上げたものだ。
なお、このときの磐梯山の噴火により、477名もの尊い命が失われている。
しかし、この辺の土産物屋では磐梯山噴火饅頭という、今だったらネットで大炎上しそうな名前のお土産もふつうに売られていたりするので、まあ、もうはるか昔のことなのだろう。
寝床の準備をしようと私のお気に入りの場所に向かうと、すでにテントが張られていた。先客がもう1組いたのだ。それも私のお気に入りの場所に。
ま、ここは譲ろうじゃないか。抜群の眺めを楽しみたまえ。
普段は利用しない林間のサイトにテントを張ることにする。
この写真に写っているものは、テントを地面に固定するためのペグ。
スノーピーク社の製品。同社の製品は私の好みではないのだが、このペグだけは文句なく素晴らしい逸品。
土中にある多少の石や木の根っこなどはまるで問題にせず、ガンガンズンズングイグイと地面に潜っていく頼もしいやつ。
焚火台。
焚火はこのような台上で行う。直接地面で火をおこすと、草はもちろんのこと地中に住む生物たちにもダメージを与えてしまう。
この焚火台はユニフレーム社製。
長く使ったせいで、だいぶ歪みが出て来た。
テントの設営は5分もかからずに終わる。
見上げた木々はまだ青々としていて、紅葉にはほど遠い。
ママキャンプ場の場所はここ
坂下ドライブインほりに名物の馬刺しを買いに行く
ここママキャンプ場からほど近い会津は、馬刺しが名物だ。馬刺しは私の好物でもある。
裏磐梯にキャンプに来たら、必ず馬刺しを買うために会津坂下(あいずばんげ)町まで出かけている。
私が良く馬刺しを買いに行くのが会津坂下町にある坂下ドライブインほりだ。
通り沿いのこの黄色い看板が目じるし。
お店の外観。
駐車場が広いが、連休などの時は一杯になることがある。
馬刺しを多く消費する土地柄なのだろう、町のあちこちに桜肉や馬刺しのノボリが立っているのを目にする。
馬肉の生産量は、熊本県が圧倒的で日本全体のほぼ半分を生産している。それに続くのが福島県で日本全体の4分の1を生産するという。
こちらが馬刺し。部位はモモ。
まれにレバーが並ぶことがあり、その幸運に恵まれたら必ず買っている。
こちらはハーフサイズ。
馬刺しにはどれも辛し味噌が付いている。
辛し味噌の別売りの小瓶。
馬刺しには十分な量の辛し味噌が付いてくるので、普通であれば買う必要はない。
だが自宅用に欲しい気もして、私は毎度この小瓶のまで葛藤してしまう。
馬肉の燻製とウィンナー。
坂下ドライブインほりの名物である桜にこみ。いわゆる大和煮、
普通の大和煮は、生姜などを使って何の肉か分からなくなるまで過剰に甘辛く煮込む。
ここの桜にこみにはしっかりと馬肉の味が残っていて美味い。
私がこの坂下ドライブインに惹きつけられる吸引力の一つ、桜にこみ。それが本日は品切れ。
なんだか今日は踏んだり蹴ったりだ。これが天中殺ってやつだろうか?
幸福の木。
上部を梁が貫通している。どうなってんのコレ?
馬刺しの販売店に隣接してお食事処があり、こちらでも馬肉料理を楽しめる。といっても私は入ったことが無い。
帰途、いい感じのあぜ道を見つけた。
山がある風景っていいなぁ。我が茨城県にもあれくらいの山が5,6個は欲しいところ。
坂下ドライブインほりの場所はここ
檜原温泉たばこ屋旅館で日帰り入浴
裏磐梯エリアでキャンプをするときには必ずお世話になるのがたばこ屋旅館の温泉。
とても気のいいご夫婦が営まれている。源泉かけ流し。
日帰り入浴料は温泉税を含めて400円。
浴室の引き戸を開けると、猛烈な湯気にレンズが曇った。
ここのお湯はかなり熱め。
標高800mにあるこのエリアは、平地より格段に寒い。
冷えた体に、この熱い温泉が芯まで沁みいって別格に気持ちいい。
以前、岩手県をぶらりぼっち旅した時に入った温泉で、温泉の達人に出会いとても感動した。その話も書きたいのだが、このブログはグルメを通して世界平和を考えるというのがメインテーマだ。今後、温泉がからむ話が出るかどうかは分からない。
風呂を出て女将さんにご挨拶と明日また来ることを約束し、ふたたびママキャンプ場へと戻った。
檜原温泉たばこ屋旅館の場所はここ
温泉に入ってからママキャンプ場に戻った
ママキャンプ場に戻ると、数組の客が増えていた。
管理人さんが私の姿を見て小走りに掛けてくる。
管理人さん「たばこ屋温泉から電話があって、明日は急用ができたので温泉が空くのは夕方になると言付かった」とのこと。
わざわざ連絡をしてくれるなんてありがたい。裏磐梯にとって私はソワニエだということだろう。
ま、それは置いておいて、しかし困った。
焚火はキャンプの大きな魅力の一つだが、焚火をすると長い時間、全身が煙でいぶされる。
さしずめいぶりぼっちといったところか。
なので焚火をした次の日は、頭を洗って服を着替えたい。何しろ冷えた体を温泉で温たいのだ。
とりあえず、坂下ドライブインで購入した馬刺しを紙皿の上に盛る。
普段なら紙皿なんて使わずに、パックのまま頂くが、一応このブログに載せる写真なので見栄を張る。
張った見栄の結果が紙皿というのがなんとも悲しいが、しょうがない。
会津の馬刺しの特徴となるのが、この辛しみそ。
味噌と唐辛子、それにニンニクが入っている。これを醤油に溶いて使う。
店によってレシピがあるのだろうが、私の口には坂下ドライブインの辛しみそが合う。
会津で辛しみそが使われるようになったのは、プロレスラー力道山が広めたと聞いたことがあるが、その真偽は不明。
暗くなってきたので、早めにランタンに火を灯した。
左はコールマン。燃料はホワイトガソリン。寝るまでの数時間はこれで過ごす。
右はフュアハンド社のストームランタン。燃料はパラフィンオイル。
こいつの柔らかい光は目に心地よい。これはテント内に吊って常夜灯にしている。
wild-1水戸店のレジカウンターの上にディスプレイされていたもの。一目ぼれして買った。
馬刺しをアテに酒を飲む。こんな山の中で一人ぐでんぐでんだが大丈夫だろうか?
星空が綺麗なので写真に撮ろうといろいろ試したが、いまいち成果が出なかった。なかでも一番マシなのがこの写真。
ママキャンプ場の翌朝の風景
翌朝目が覚めると外がざわざわしている。
こんな早朝になんだ?と携帯の時間を見ようとしたら、いつの間にかバッテリーが切れていた。
時間が分からないが、とにかくテントの外に出てみよう。
和田アキ子風に言えばキャメラマンの皆様がおおぜいいらっしゃっていた。
みな、日の出の瞬間をまっているようだ。
持参した温度計をみると、気温は5度。
朝のコーヒーを入れるため、お湯を沸かす。
バーナーもコールマン社製を使っているが、こいつは燃料がどこかから漏れているらしく、よく火だるまになる。
しかしここ何年かは錆びが浮いて来たせいで、運よく漏れの原因となっている個所を錆びがふさいでくれたらしい。そのせいか、セルフ炎上することが少なくなってくれた。
「意気な錆が出来た」とは、きっとこういうことを言うのだろう。
朝の磐梯山。
いつの間にかテントが増えていた。
最近の風潮では、この写真のような昔ながらの三角形のテントが人気らしい。色は、やはりこの写真のようなナチュラルカラー。
まったく流行に流されやすい人種ってのは、どこにでもいる。
一方、これが私のテントだ。
そうだ、流行に流されやすい人種ってのは、どこにでもいるモノなのだ。
愛用のナイフ。
deejo(ディージョ)というメーカーのもの。
これもwild-1で一目ぼれして買った。
私は惚れっぽい性質のようだ。
今回は薪をまとめていたビニールテープを切ることにしか使わなかった。
もちろん調理用に持ってきたものだが、いざのいざとなれば、護身用として役立つだろう。
美しく銀色に輝く刃が、血の渇きを訴えかけてくるようだ。
フフフ、このキャンプ場において、私の機嫌を損ねるようなことはしないほうが身のためだな。
なんて思っていると、隣のテントの若者2人組が、カッコーン・・・カッコーン・・・と軽快な音を立て、ハンドアックスで薪を割りを始めた。
・・・斧、か。
彼らの機嫌を損ねるよなことはしないほうが身のためだ。
私は決心した、できる限りのさわやかな笑顔で挨拶をしよう。そして好感度抜群の態度で接しよう。
なんなら、今のうちにもみ手の練習でもしておこうか。
気温は徐々に上がり始めて来た。日光が温かい。
朝露の中を歩き回ったせいで、靴も靴下もビチョビチョだ。
そういえば、車のトランクに防水加工が施されたトレッキングシューズがあったはずだ、あれに履き替えよう。
2、3泊する予定でいたのだが、今回は何だか裏磐梯と波長が合わない。
めだかのがっこ、桜にこみ、朝の温泉、天気。
なにより天気だ。明日は雨になりそうだ。雨のキャンプほど退屈なものはない。
雨の日のキャンプは一日中テントにこもって、両の膝を抱えて子供の頃の思い出を辿るか、もっとさかのぼって、前世の記憶を辿るくらいしかやることが無い。
待ちに待った1年ぶりの秋の裏磐梯だけれども、今回はもう、帰ることにしよう。
そういえば、めだかのがっこの「しばらく休みます」の張り紙は写真に収めたが、建物の写真を撮り忘れていた。
帰る前に、もう一度めだかのがっこに行って写真を撮ることにした。
テントを撤収し、管理人さんにご挨拶。また来年お会いしましょう。どうかご達者で。
このママキャンプ場は、現在の管理人さんのお母様が始めたキャンプ場だ。現在の管理人さんは2代目のママ。
先代のママは女手一つでこのキャンプ場を作り、切り盛りしていた。その頃キャンプ場に宿泊した客の一人がこのキャンプ場を「ママのキャンプ場だね」と先代ママに言ったのが、ママキャンプ場という呼び名の始りだった。
確かそんな話だったと思う。
改めて調べてみようとしたが、近年のママキャンプ場は人気のキャンプ場らしく、ネットの情報を辿ることができなかった。
年内は10月いっぱいまで営業しその後はクローズ。次は来年の5月からの営業となる。
さて、いつもなら目が覚めたら、たばこ屋温泉に朝風呂を頂きに行くところだ。
しかし、前日に知らされた通り、今日のたばこ屋温泉は夕方まで開かない。
管理人さんと話していたとき、近くにもう1つ温泉施設があることを思い出した。
ふれあい温泉 湖望
大人は400円。子供は200円。
困ったのは、営業時間。夏季は午前10時30分からと書いてある。
現在の時間はそのだいぶ前。
しかし、入り口には営業中の札。
恐る恐る戸を引いて中を伺うと、まさに東北美人そのものといった女性スタッフさん出て来た。
jam「あの、今、入れますか?」
東北美人「はいはい、どぞー」
その場で400円を支払い、浴室へ向かった。
客は誰もいない。
洗い場の設備は新しい。
こちらもたばこ屋温泉と同様に源泉かけ流し。
設備は結構新しめ。たばこ屋温泉ほど熱い湯ではないけれど、十分に体が温まる。なにせ煙で燻された体を洗えるのはありがたい。
私は足を存分に延ばして温泉を楽しんだ。
そして湯からあがり、本日さっそく3足目となる靴下を履いた。
たとえ汚れていなくとも、一度脱いだ靴下を履くのには抵抗がある。なぜだろう?
さて、今日こそは喜多方市の朝ラーを楽しもうか。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
心よりお礼申し上げます。