ハンバーガーといえば、誰もが真っ先に思い浮かべるのは「マクドナルド」だろう。
その存在は、もはやハンバーガーの代名詞になっている。
つまりはハンバーガー界の絶対王者。
世界中のありとあらゆる場所に店を広げ、その地に住まう人々の胃袋を強力に支配する。
その圧倒的な支配力はこの極東の小さな島国にまでおよび、日本には約2,900店ものマクドナルドが展開されている。
日本全国のあらゆる国道や主要な基幹道路の道沿いにはゴールデン・アーチ(黄金に輝くMのマーク)が高々と掲げられ、マクドナルド王国の繁栄ぶりを道行く人々の目と心に焼き付ける。
休日ともなれば、国道沿いの店の前にはドライブスルーの順番を待つクルマが長い長い列をなし、その行列は地平線のはるか彼方にまで続いていく。
そしてその渋滞の列は、たまたまその道を通りかかっただけのドライバーたち(私を含む)を巻き込み、少なからずイラっとさせてくれる。
Mosh under the diners stand(モッシュ アンダー ザ ダイナーズ スタンド)
新型コロナウイルスの影響により世の飲食店が苦戦をしいられているこのご時世、新たに店を始めるというのはかなりハードルが高い。
しかもその店で扱う料理が、絶対的な王者が君臨するハンバーガーとなると、そのハードルはより一層高くなる。
どう考えても分が悪い。
いや悪すぎる。
いったいなんだって、そんな茨の道を選んだのだろうか?
そして絶対的な王者が君臨するハンバーガーの世界でどのように戦うつもりなのだろうか?
とても気になる。
というわけで、今回ご紹介する『Mosh under the diners stand』は、世界中が新型コロナウイルスの影響にあえぐ真っ只中、2020年にオープンしたばかりのハンバーガーのお店だ。
やぁ諸君ごきげんよう。
ぼっちメシ研究所のジャムだ。
外観
こちらがお店の外観。
開店時刻ちょうどに伺ったのだが、この時間はあいにくの逆光。
そのため写真では暗めに写ってしまったが、実際に目にするとシルバーな未来的でキラっとした外観も相まり、かなり明るい印象をうける。
店内の様子
店に入ると「いらっしゃいませ!」と、2人の男性スタッフが元気に出迎えてくれた。
2人とも若く、まだ30代に入ったばかりといったところ。
大柄な2人はそのイカツイ見た目に反してとても腰が低く、丁寧な接客がとっても好印象。
案内されたのは、ぼっち指定席ともいえるカウンター席。
背の高い洒落た椅子が並ぶ。
はたして中年ぼっち客が、こんなカッチョイイ椅子にすわっていもいいのだろうかと、ちょっと気持ちが負ける。
なんとなくお椅子様に遠慮しつつ腰を下ろしてみると、これが思いのほか収まりが良くリラックスできてイイ感じだ。
アメリカンでポップな店内は大きな窓に囲まれていてるためとても明るい。
店の建屋自体が新しく、しかも手入れが行き届いていて気持ちがいい。
清潔に保たれた店内からは、お店に対するオーナーの愛情が感じられる。
各テーブルの間隔は他の店では見られないほど、かなり広く取られている。
そのゆったりととした空間が、またより一層アメリカンな雰囲気を盛り上げる。
カウンターの端に座り、振り返って天井を見上げる。
高い天井は解放感があってこれまた気分がイイ。
備え付けのメニュー。
ちょっとコワそうなオジさんが巨大なハンバーガーを頬張るイラストが描かれている。
メニューにはホットドッグ780円、ミックスサンド800円、ハンバーガー970円などが並ぶ。
トッピングやソースをオプションで付けることができ、自分好みのハンバーガーを作ることができる。
しかし、お目当てはなんといっても「Mosh burger」。
店の名を冠したメニューってのは自信作の証。
まずはコイツをいただきたい。
ハンバーガー、ホットドッグ、サンドウィッチにはサラダとポテトが付く。
ただしスライダーバーガーには付いてこない。
このスライダーバーガーってのは小さめのミニチュアなハンバーガーらしい。
ハンバーガーといっても所詮はパン。
なんせこっちは育ち盛りの食べ盛り。
パンの1つ程度の昼飯で、腹は膨れるとは思えない。
ということで「アボカドシュリンプホットドッグ」も一緒にオーダー。
ドリンクは「マルティネリアップルジュース」
ジュースのために改良されたリンゴが使われているそうだ。
デザートには「自家製プリン」
Moshバーガー+アボカドシュリンプホットドッグ+マルティネリアップルジュース+プリン
マルティネリアップルジュース。
リンゴを模したガラスの容器に入っているジュースは、蜜たっぷりのリンゴを思わせる琥珀色。
当たり前だけれど、リンゴそのものって味。
さて、おまちかね「Mosh burger」のご登場。
まるでダルマ落としのような巨大なタワー状のハンバーガー。
上からバンズ、プルドポーク、チーズ、パティ、タマネギ、トマト、レタスと続き、最後にまたバンズ。
バベルの塔を思わせるデカさ。
そのてっぺんからは神の怒りを現したかのようにバーベキュー用の金串がぶっ刺さる。
付け合わせのフライドポテト。
そしてサラダ。
バンズをめくりあげるとまず顔を出すのはプルドポーク。
プルドポークってなんなのよ? と思って調べてみたら、なんでも豚ロース肉にスパイスにまぶして焼いたもの。
肉にスパイスを刷り込んだら半日ほど味を馴染ませる。
それからバーベキューグリルやスモーカーなどを使ってじっくりと半日ほどかけて焼き上げる。
けっこう時間のかかる料理。
テーブルに備え付けられている紙に包み、片手に持ってみると案の定というか手のひらの中に収まりきらない。
予想以上のボリュームにとまどう。
これがアメリカンサイズか。
っていうかこれ、どこからどう口をつけたら良いのかがさっぱり分からないぞ。
まるで巨大な壁だ。
どうにも最初に口をつける取っ掛かりがつかめない。
いったいどこから齧りつけばいいんだ?
とりあえず上下から圧縮して口を付ける。
うわ、うんまっ!!
めちゃくちゃ、濃い。
なにが濃いってアメリカが。
アメリカンで、まさに本能に直結した味。
パティは超粗びきで、挽肉というよりもブロック状の肉を圧縮して押し固めたような感じ。
そのパティだけでも十分に旨味が強いのに、そこにさらにプルドポークのスパイシーな旨味がかぶさる。
プルドポークは炭火で蒸し焼きにしているのか、スモーキーな香りがまたたまらない。
オニオンとトマトのフレッシュな歯ごたえ、それにバンズのこうばしい小麦の風味。
それらの味が1つのかたまりとなって、口の中に押し寄せてくる。
これは・・・
こそはまさに旨味のゴールドラッシュ!!!
多少、手が油でギトギトになるのはしょうがない。
そんなところも含めて、なんだかアメリカンじゃないか。
ボリューム抜群のハンバーガーを堪能しているところに運ばれ来たのは「アボカドシュリンプホットドッグ」
ロングなソーセージの上には、マヨネーズをからめたエビとアボカドがどっさりと乗っている。
想定外だったのは、ホットドッグにもフライドポテトが付いてくること。
だってもう、腹はパンパン。
もうポテトが入るすき間なんてない。
サラダの存在がありがたい。
デカいホットドッグを包み紙にセット。
ガブリとかじりつくと、これが意外なことにまろやかで優しい味付けで美味い。
ジャンクで塩っ辛い味を想像していたので驚いた。
普通に、いや普通以上に美味い。
これは完全に予想外の味。
ちょっと辛味を足したくなって、タバスコをお借りした。
黒いラベルはより辛口の『SCORPION SAUCE』。
見慣れた緑ラベルのタバスコの10倍の辛さ。
緑ラベルのタバスコを振り掛ける。
辛味成分はマヨネーズとアボカドの脂に包まれればそれほど辛くはならないはずと考え、ドバドバかけた。
辛味が加わり、いっそう刺激的な味になる。
何かのテレビ番組で、アメリカの野球場でホットドッグを販売する売り子たちのパフォーマンスを見たことがある。
観客席に座っている誰かが売り子に向かって大声でホットドッグを注文する。
「おーい、こっちにホットドッグ1つくれ」ってな感じ。
すると売り子はその客に向かってホットドッグをぽーんと投げる。
そのコントロールは素晴らしく、どんなに遠く離れた客に対しても正確にホットドッグを投げ渡す。
まさに神技。
久しぶりにそのパフォーマンスを見たくなり、ネットを検索すると「ホットドッグ・キャノン」なるものの存在を知った。
これはプロ野球選手たちが、球場に訪れたファンたちに向けてホットドッグを投げるための専用マシーン。
一種のファンサービスってことらしい。
どうやらアメリカ人ってのは、ホットドッグを投げるのも、投げつけられるのも大好きなようだ。
押し出されたソーセージをフォークで頂きフィニッシュ。
やっべー、腹がはち切れそう。
デザートのプリン。
ふわっと系のプリン。
フルーティーな風味がパンパンに膨れた胃に優しい。
甘いものは別腹とはよく言ったもんだ。
スタックインアメリカバーガー+リミートドッグ+7UP
数週間後、ふたたび『Mosh under the diners stand』へと向かう。
入口のドアに貼られたコワいオジさんのイラストが出迎えてくれた。
カウンターの上にマンスリーバーガーと書かれたボードがぶら下がっていることに気が付いた。
どうやら月替わりでスペシャルなハンバーガーが数量限定で提供されるらしい。
この時は3種類がラインナップされていた。
なんだか「スタックインアメリカバーガー」ってやつが気になる。
その内容はプルドチキン、チーズ、サルサ、メロンバンズ。
ん?
メロンバンズ?
それってつまりはメロンパンのことだよな。
とても気になる。
ということで、気になるこいつを食べてみることにした。
それと「チリミートホットドッグ」も合わせて注文。
ドリンクは「7UP」
この日は東京オリンピックの開催期間中ど真ん中。
店内の大型テレビでは、自転車競技のBMXの決勝戦の模様が中継されていた。
各国を代表するライダーたちが、走り、飛び、華麗にトリックを決めたり、ズッコケたりしている。
競技のルールはまったく分からないが、その様を見ているだけで十分に楽しめる。
それにしても、BMXを見ながらハンバーガーのランチって、とってもアメリカンだ。
7UP。
まんま缶ジュース。
ワイルドすぎる。
ストローが刺さっているが、なんなんらストローなんて無くてもいい気もする。
BMXの中継に夢中になっていると「スタックインアメリカバーガー」が運ばれてきた。
このふてぶてしいまでのデカさよ。
てっぺんのバンズからは甘い香りが立ち昇ってきて、これが紛れもなくメロンパンであることを主張する。
しかし、視覚から入って来る情報「ハンバーガー」と、嗅覚から入って来る「メロンの香り」という相反する2つの情報が頭の中で整合性を取ることができず、ちょっと混乱する。
これはハンバーガーなんだよな?
バンズをめくるとこんな感じ。
野菜たっぷりのサルサソースがうれしい。
こうして見ると、ハンバーガーって意外と野菜が豊富に使われているんだな。
なんならヘルシーと言ってもいいくらいだ。
備え付けの包み紙でくるんで手に持つと、これがまたとてつもない質量。
これは・・・これはまるで星。
土星か木星を手の中に握っているような感覚。
ああ・・・いつかはこんな星に住んでみたいと切に思う。
そしてハンバーガーの規格外のデカさに、如何に己がちっぽけな存在であるかを再認識させられ、なんだろう、なんだかもうスミマセンって感じだ。
かぶりつくと、メロンパンの甘さとプルドチキンのスパイシーな風味、それにパティの塩気がいっぺんに口中にひろがる。
後からすぐにチーズの風味とサルサソースの辛味が追いかけてきて、口の中は一気にカオス。
追い打ちをかけるかのようにメロンフレーバーが鼻を抜ける。
でも悪くない。
というか、なんかけっこう美味いぞ。
これはまったく未知なる食の体験。
これは・・・
これは、味の新大陸発見・・・!!
新たな味の大陸を見つけた興奮に震えつつ、ハンバーガーをギュギュギュっと圧縮して口の中に押し込む。
甘く、しょっぱく、スパイシー。
ごっくんと飲み込んで、ふたたびハンバーガーを口の中に押し込み、そして7UPを流し込む。
そんなルーチンを華麗に繰り返し、あっという間にペロリ。
いやコレめちゃくちゃアリ、ってかすんげーウメーな!
お次はこちら「チリミートホットドッグ」
さっそくチリミートを味見してみると、スパイスが効いてかなり刺激的。
ミートソースのようなものを想像していたけれど、ソースのようなユルさはなくて肉感あふれる。
包み紙にホットドッグをセットする。
レディー! セット! ハット!
戦闘準備完了だ!
ガブリとかみつくと、最初にスパイシーなチリミートがガツンと来る。
次にパンからはみ出してきたチリミートが、鼻の先っちょにペトリと付く。
こりゃワイルドだ。
ホットドッグの屋台骨を支えるロングでロングな、そしてロングなソーセージの存在がじつに頼もしい。
ソーセージのパキッとした歯ごたえってのは、やっぱイイもんだね。
ところで、ハンバーガーの場合、具材を挟み込むパンのことをバンズとよぶ。
なぜだかパンとは言わない。
だからきっとホットドッグに使われるパンも、なにか特別な呼びかたがあるかと思って調べてみたら、別にそんなのなかった。
ホットドッグの場合、パンはあくまでパン。
特別な呼びかたなんて無い。
無いなのだが、本場アメリカでホットドッグに使われるパンってのは、ただのパンとはちょっと違うものらしいってことを知った。
日本でよく見るホットドッグに使われるパンといえば「コッペパンのような細長いパン」で、その見た目も味も風味もまさに「パン」としか言いようのない素っ気ないもの。
つまりはまさにパンに他ならない。
しかし、アメリカのホットドッグで使われているパンはちょっと違う。
具体的に言えば「甘みのある角張ったパン」が使われるそうだ。
ほほーう。甘いパンを使うのか。
で、ここ『Mosh under the diners stand』のホットドッグに使われているパンも、甘みが強く、そして角ばっていて、そしてなによりビックリするほどバターの風味が濃い。
ようするにパンそれ自体が美味しいステキな仕様ってことで、美味いのよ、パン自体が。
ビーフオーバーライス+サルサドッグ+チェリーコーク
地面に落ちた枯れ葉が風に吹かれ、カラカラと乾いた音を立てながらアスファルトの上を転がっていく。
夏は過ぎて、季節は秋。
気が付けば2021年も10月。
馬鹿デカいハンバーにかじりつくにはピッタリな季節の到来だ。
いつものようにクルマに乗って『Mosh under the diners stand』へと向かおうと思ったのだが、ふと思い直す。
せっかく魅力的な季節がやってきたのだ、この季節をもっと楽しみたいじゃないか。
秋晴れの休日に、いわゆる「小さな秋」ってやつを見つけながら歩いてみるってのも悪くないアイデアだ。
ということで、店から少し離れたコインパーキングにクルマを停めて歩いてみることにした。
ところが、いざパーキングにクルマを停めてドアを開けて外に出ると、思わぬ熱風が顔を直撃する。
この日なぜか10月だというのに最高気温は28度をマーク。
季節外れの夏日だ。
あ゛あ゛あ゛暑い!!
お店へと向かう道中、アンパンマンの顔がついた遊具を見つけた。
しかし、このアンパンマン、なんだか目ヂカラがハンパない。
なんだろう、白目があるせいなのか?
ちょっとコワい気もする。
目を見開いたアンパンマンにちょっぴり秋の訪れを感じた。
真夏のように照り付ける強烈な日差しの中、汗だくのヘロヘロになりながら『Mosh under the diners stand』を目指して歩く。
この日、もしあなたが水戸の街中で「死んだ魚のような目をしながらゾンビのようにフラフラと歩く中年ぼっち」を見かけたのらな、そのゾンビもどきはおそらく私だろう。
もしくは本物のゾンビのどちらかだ。
10月となりマンスリーバーガーはラインナップがちょっと変わった。
前回頂いたスタックインアメリカバーガーはまだ残っている。
どうやら人気商品のようで、それを食べることができたことがちょっとうれしい。
間もなくレギュラーメニュー入りだろうか?
注文したのは「ビーフオーバーライス」
ハンバーガーの専門店で、あえてのご飯ものをチョイス。
相棒はこちらの「自家製サルサホットドッグ」
ドリンクは「ドクターペッパーチェリー」
ホットドッグをチェリーコークで流し込むって、なんかブランキー・ジェット・シティーの歌詞に出てきそう。
ドクターペッパーチェリー。
まったくチェリーっぽくない緑色の缶。
これがアメリカのセンスか。
でもドクペって、もともとオリジナルの缶の色がチェリーっぽいえんじ色しているもんな。
さてこちらが「ビーフオーバーライス」
サニーサイドアップな目玉焼き皿全体に覆いかぶさり、その一面にはチリパウダーとパセリががまぶされている。
水菜、タマネギにチーズ、崩したパティ。
ポテトサラダ。
ちょいと目玉焼きをめくって中を拝見。
土台の白飯のが顔を出し、食欲を刺激するたまらなくイイ匂いが立ち上ってくる。
料理が運ばれて来た時に「よく混ぜてからお召し上がりください」とのアドバイスをいただいた。
混ぜる前に、まずは半熟の目玉焼きにフォークを入れる。
ポチッとな。
一心不乱に混ぜる。
混ぜて、混ぜて、混ぜまくって、そして、また混ぜる。
スプーンですくって口の中へと放り込む。
炭水化物、動物性たんぱく質、脂、塩分。
この4者が奏でる悪魔的なシンフォニー。
こ、これは禁じ手だろ。
こんなのいくらでも食べられちゃうぞ。
耽美なジャンクな美味さに溺れている。
シャキシャキの野菜たちの存在感が光っている。
味付けにはチリペッパー、カイエンペッパー、クミンなどのスパイスが使われているそうだ。
2種類のペッパーを使っているってあたりに、ただならぬコダワリを感じる。
さて、ここで話は大きく脱線する。
ここからは最近みたある映画の話だ。
それは『ファウンダー ~ハンバーガー帝国のヒミツ~』って映画。
原題はシンプルに『The Founder』なんだけど、日本公開版のタイトルには「~ハンバーガー帝国のヒミツ~」という、ちょっぴりダサいサブタイトルが付けられている。
その副題の指すハンバーガー帝国とは、もちろんマクドナルドのこと。
きっとマクドナルドの知られざる暗部を暴くドキュメンタリー映画なんだろうなぁ、と期待して見てみたらぜんぜん違っていた。
映画の主人公は、マクドナルドの創業者とされているレイ・クロック。
なんてったってマクドナルドを創業した人ってんだから、これはもう間違いなくビジネス界のレジェンド。
アメリカ人なら誰もが知っているビッグ・ネームだ。
舞台は1950年代のアメリカ。
今からおよそ70年前だ。
当時レイ・クロックはミルクシェイク用ミキサーのセールスマンをしていた。
このときの年齢は52歳。
ある日レイ・クロックは、ミキサーの販売先として訪れたマクドナルドでとてつもない衝撃を受ける。
な、なんて美味いハンバーガーだ!!
って衝撃ではない。
彼が驚いたのはハンバーガーの味ではなく、それを製造販売するためにマクドナルド兄弟が作り上げたシステムとオペレーション。
その店(つまりマクドナルド)では、多数のスタッフを雇い入れて、ハンバーガーを作る各工程ごとに専門で作業を行う人員を配置していた。
つまりは分業制だ。
スタッフたちが担当する各工程はいちいち細かく規定が決められいて、たとえばフライドポテトなら、揚げ油の温度や揚げ時間が厳密に決まっている。
またハンバーガーであれば、使用するピクルスの量や、味付けに使用するケチャップ、マスタードなどの調味料の使用量が決められている。
さらに、それらの作業を行う厨房の中は、スタッフたちがもっとも効率的に動くことができるように動線が確保され、それにあわせてハンバーガーを焼く鉄板やフライドポテトを揚げるためのフライヤー、シンク、冷蔵庫などの設備が綿密にレイアウトされている。
兄弟の店は「ハンバーガーを作って売る」ための効率をとことんまで追求し、店のすべてがそれに合わせて最適化され特化されていた。
その徹底されたシステムにより、注文を受けてから提供するまでの時間はわずか30秒。
チョー早い。
店の前には客たちが長蛇の列を作るが、ハンバーガーが驚異的なスピードで提供されるため、列に並ぶ客は次々とはけていく。
革新的だったのは合理化した調理システムだけではなかった。
マクドナルドは、当時の外食産業では当たり前だった「料理を皿にのせて提供し、ナイフとフォークで食べる」という常識さえもぶっ壊した。
ハンバーガーを紙に包んで提供し、そのまま食べてもらう。
客にはナイフもフォークも皿も出さない。
そしてフライドポテトやドリンクも使い捨ての容器で提供し、食べ終わったら、包み紙はゴミ箱に捨ててもらう。
これにより、食器類を使う必要がなくなるので、必然的に洗い物の手間を省くことができ、さらに皿やグラスが割れるリスクも回避できる。
今では当たり前になっているこうしたハンバーガー店の飲食スタイルだが、1950年代当時、これはとてつもなく画期的な発明だった。
レイ・クロックは、このシステムで商売することを思いつく。
売る商品はハンバーガーそのものではなく、マクドナルド兄弟の作り上げた「合理的なシステム」で、それを売る相手は「フランチャイズ契約者」
当初マクドナルド兄弟このアイデアにあまり乗り気ではなかった。
彼らは自分たちの目の届く範囲内で小さく商売ができればそれで十分だと考えていた。
しかし、レイ・クロックの熱意と説得と強引さに押し切られる形で、彼に条件付きでフランチャイズ事業を委託することになる。
この『The Founder』という映画は、今日まで続くマクドナルド帝国のその歴史の始まりの物語であり、レイ・クロックとマクドナルド兄弟の友情を描いた心温まる物語り。
・・・かと思えば、さにあらず。
もともと、彼らが考えているビジネスの方向性はまったく違っていた。
レイ・クロックはマクドナルドのシステムをフランチャイズ展開し、一刻も早くビジネスを広げたいと考えている。
しかし、マクドナルド兄弟は店舗の数を増やすことによって管理の目が行き届かなること、料理のクオリティーが下がること、自分たちが築き上げた信頼に傷がつくことを嫌い、早急なビジネス展開に対して慎重な態度を取る。
両者の思想は真っ向から対立。
まさに水と油。
そんなわけで、わりと最初から両者の関係はギスギスしている。
普通の映画であれば、両者は何度も衝突を繰り返しながらも徐々にお互いを理解し合い、そして信頼と友情を深め、やがて1つの目標に向かって協力して進んでいく、というのが王道の展開となるところ。
しかしこの映画はレイ・クロックという人間と、そのビジネスにスポットを当てた映画なのだ。
なのでヒューマニズムにあふれた王道のご都合展開とはならない。
ではその後、この物語はどうなって行くのか?
レイ・クロックはマクドナルド兄弟の考えや意見に対してほとんど無視を決め込み、ただ1人独善的にフランチャイズ展開を押し進める。
世間の中間層といわれる人々と次々とフランチャイズ契約を交わし、やがてマクドナルドを17の州へと広げていく。
つまり彼のビジネスは大成功だ。
もう完全に波に乗っている。
しかしこうなってくると、もはやマクドナルド兄弟の存在は邪魔でしかない。
なぜならフランチャイズ契約を取ることこそが彼のビジネスの利益の源なのに、あろうことかマクドナルド兄弟は「店の数を増やしたくない」と考えているからだ。
そうなると、彼にとってはやっかいな障害物。
もしくは目の上のタンコブ。
自分のビジネスにとって兄弟の存在は不利益であると結論付け、すぐにスゴ腕のヒットマンでも差し向ける・・・のかと思ったら、さすがにそんなヤバいマネはしない。
ビジネス上の問題を解決する手段はあくまでただ1つ。
つまりはカネ。
レイ・クロックは、マクドナルド兄弟から「マクドナルドに関する全ての権利」を270万ドルという大金を支払って手に入れ、マクドナルドを完全に自分のものにする。
この取引契約の場で、マクドナルド兄弟(の弟)は、レイ・クロックに対してある疑問をぶつける。
「なぜマクドナルドの権利を欲しがるのか?」
なるほど、言われてみれば、ごもっとも。
じつに真っ当な疑問だ。
なにせレイ・クロックは、マクドナルド兄弟が生み出した効率化システムとオペレーションのすべてについて十分に熟知していた。
だから、もし彼がマクドナルドのようなハンバーガー店のフランチャイズ展開でビジネスをしたいというのであれば、兄弟を抜きにして自分1人で新たにハンバーガービジネスを始めれば良だけの話。
彼にはそれを実行するための十分な資金もあるし、そうすることに法的な障害もない。
なにもわざわざ270万ドルという大枚をはたいてまでマクドナルドの全権利を買い取る必要などなかったはずだ。
ではなぜ彼はマクドナルドの権利を手に入れることに固執したのだろう?
じつはその理由こそが、この映画につけられたダサいサブタイトル「ハンバーガー帝国のヒミツ」ってやつなのだ。
ネタバレになるかもしれないので、そのヒミツの詳細についてはここでは書かない。
なんでもレイクロックによると、このハンバーガービジネスを成功させるためためには、マクドナルドだけが持つ「ある特別なもの」がどうしても必要だったのだという。
マクドナルド兄弟たちですら気が付いていなかった、その「ある特別なもの」を手に入れるためにマクドナルドの全権利を彼は買い取ったのだ。
さぁ、物語りはクライマックスってなシーンなんだけど、しかし、いざそのヒミツってのを聞かされても、なんだかピンと来なかった。
「うーん・・・そうなの? ああ、ふーん・・・」って感じ。
もしかしたら、アメリカ人であれば「ああ、なるほどね!」と膝を打つのかもしれないが、日本人である私はイマイチ素直に納得することができなかった。
しかし。
実際のところ、この世の中にマクドナルド以上に成功しているハンバーガー屋なんてものは無いわけだから、彼が手に入れたヒミツというのは本当に特別なものだったのかもしれない。
それにそのヒミツを知ったところで、きっと誰にも彼のマネなどできないだろう(エンディングでは、このヒミツについてレイ・クロック本人の肉声で語られている場面が挿入されている)。
ちなみにこの映画では描かれていないが、この取引によってマクドナルド兄弟は「マクドナルド」という店名やゴールデンアーチ(Mのマーク)を使うことができなくなる。
そこで兄弟は店の名前を「The Big M」に変えて営業を続けることにするのだが、しかしレイ・クロックは非情にも「The Big M」の近くにマクドナルドをオープンさせ、兄弟の店をつぶす。
うーん、ビジネスって残酷よね。
と、なぜかマクドナルドの話をしているうちにビーフオーバーライスも最後のひと口を残すのみとなった。
欲を言えば、できればなにか温かい飲み物、たとえばコンソメスープでも付けてくれるとありがたい。
お次は「自家製サルサホットドッグ」
包み紙にセットしてライムをぎゅうぎゅうに絞る。
パキっとはじけるソーセージの旨味とサルサソースの爽やかさ。
なにかタイ料理のようなエスニックな酸味が混ざっている。
おや、これなんの風味だろう? って、ああ、これってライムの風味だ。
ライムがものすごくイイぞ。
ここでまたまた脱線だ。
マクドナルドについて書いているうちに、レイ・クロックについて、もう1つエピソードを思い出したのだ。
それは『金持ち父さん 貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著、筑摩書房)に書かれていたもの。
なにせ大ベストセラーな本なので、そのエピソードはすでにご存じかもしれないが、あらためてここに引用してみる。
1974年、私の親友キース・カニンガムがテキサス大学オースティン校のMBA講座をとっていたとき、講座の一環としてマクドナルド社の創始者レイ・クロックが招かれて講演を行った。
レイ・クロックはマクドナルドの前身となったドライブイン・レストランの営業権をリチャード・マクドナルドから購入し、全米から世界へとフランチャイズ化した人物だ。
非常にためになり大いに刺激となったその講演のあと、学生たちはレイを行きつけの店に誘った。レイは喜んで誘いを受けた。
「私のビジネスは何だと思うかい?」
みんなにビールが行き渡ったところでレイが聞いた。
「ぼくらは笑ったよ。そこにいた学生のほとんどが、レイは冗談を言っているのだと思っていた」
だれも答えないのを見て、レイはもういちど同じ質問をした。
「私のビジネスはなんだと思うかね?」
学生たちはまた笑った。
しばらくしてから学生の一人が思いきって大声で言った。
「レイ、あなたがハンバーガーを売っていることは世界中の人が知っていますよ」
レイはにやりとした。
「そう言うだろうと思ったよ」
わずかに間をおいてからレイは続けた。
「いいかい、私のビジネスはハンバーガーを売ることじゃない。不動産業だよ」
出典:『金持ち父さん 貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著、筑摩書房)
はぁぁ?
マクドナルドのビジネスが不動産業だって?
おいおい、寝ぼけているのか?
寝言は寝て言えっての!
ふつう、不動産業というものは、土地や建物の売買を行うビジネスのことを言うのだ。
たとえば世の中の誰かが「新しいアパートに引っ越そうかな」と考えた時や、また他の誰かが「そろそろ家を買いたいな」と考えた時に「それじゃ、マクドナルドに行ってみようか」とは絶対ならないハズだ。
そんな発想に至るとは、なんというかオツムが残念過ぎて気の毒になる。
ではなぜレイ・クロックは「マクドナルドのビジネスは不動産」と言ったのか?
彼もオツムが残念なタイプの人なのだろうか?
いやいや、そんなワケがない。
なんせ彼はビジネス界に伝説を残す大物だ。
マクドナルドが店を出す場所は、たいてい駅前やロードサイドなど、つねに人通りが多く、商売をするにはもってこいの場所。
しかしそれゆえにそんな土地には非常に高価な値が付けられているのが普通で、いわゆる一等地なんて呼ばれている。
マクドナルド社が新たにフランチャイズ店を出すとき、そんな一等地に店舗を作る。
その費用はマクドナルド社持ち。
そのため新店舗のオーナー(=フランチャイズ契約を交わした個人経営者)は、高額な土地や建物を購入する必要はない。
マクドナルド社が準備した土地と建物を賃りて商売を始める。
そうして新たなフランチャイズ店は、マクドナルド社の持つ「システム」「ブランドイメージ」「広告戦略」「ノウハウ」などを存分に使い、ハンバーガーを売って売って売りまくり、利益を上げる。
そうして得た利益の一部は「土地と建物のリース代金」として、マクドナルド社へと還元される。
これは大家と店子の関係そのものだ。
つまり大家であるマクドナルド社は、店子であるフランチャイズ店から徴収する「土地と建物のリース代金」で利益を得ている。
フランチャイズ店が営業を続ける限り、マクドナルド社は定期的に賃料を受け取ることができるのだ。
この賃料によって土地の購入費用が回収できればトントン。
もしそれ以上の利益が上がれば万々歳ってわけだ。
それに、もしいつの日かフランチャイズ店が廃業してその土地から店が無くなったとしても、マクドナルド社の手元には土地が残る。
なんせフランチャイズ店が店を出したその土地は、もともとマクドナルド社が購入し有権している土地だ。
しかもその土地は「超」が付くほどの一等地。
だからある意味、マクドナルドが手に入れた土地は、フランチャイズ店が買ってくれたようなものと言える。
だからマクドナルドは、フランチャイズ店を展開をすればするほど、世界各地の一等地が手に入るってわけだ。
いや、これはなんとも素晴らしいシステム。
舌を巻くとはまさにこのことだ。
けっして彼らはハンバーガーを売って利益を上げているわけではない。
ハンバーガーなんて、彼らのビジネスを構成するパーツの1つに過ぎない。
だから、マクドナルドのハンバーガーが「美味い」だの「不味い」だの言われることなんて、彼らにとってはどうでもイイ話だし、たとえスマイルを0円で投げ売りしようとも、それで高価な一等地が手に入るなら安いもんだ。
マクドナルド社のビジネスの本質とは、レイ・クロックが言う通りまさに不動産業にほかならい。
もし私が不動産関係で悩むようなことがあったなら、今後はまず真っ先にマクドナルドに相談してみようと思う。
脱線しまくったが、ここらで話のまとめに入ろう。
「餅は餅屋」なんて言葉があるように、ものごとは専門家や専門店など、その道のプロに任せるのが一番だ。
つまり美味いハンバーガーを食べたいなら、ハンバーガー屋に行こうぜ! ってことだ。
ハンバーガーを食べたくなって、不動産屋へ行くなんてバカな話だ。
不動産屋が作るハンバーガーの味は、専門店の作るハンバーガーの味を超えることはできない。
と、言いたいところだが、でも不動産屋の作るハンバーガーも、あれはあれで美味いんだよなぁ・・・
ああ、結局、話がまとまらなかった。
会計をして店を出ると、かっこいいバイクが停まっていた。
お店もアメリカンならお客さんもアメリカンなのね。
Mosh under the diners standの情報
Mosh under the diners standの場所はこちら
駐車場はお店の前に4,5台分。
通りが多い道に面しているのでちょっと停めにくいかも。
住 所
〒310-0852 茨城県水戸市笠原町1032−2
電 話
029-303-8969
営業時間
11時00分~15時00分
17時00分~22時00分
定 休 日
Mosh under the diners standのメニュー
※ 価格は2021年のもの。
税抜き価格を記載。
ハンバーガー
ハンバーガー
970円
kids 182 burger
600円
スライダーバーガー
300円
食べ比べスライダーバーガー
700円
Mosh Burger
1,350円
サンドウィッチ
ミックスサンド
800円
プルドポークサンド
1,250円
ベーコンエッグサンド
1,000円
ホットドッグ
自家製サルサホットドッグ
830円
アボカドシュリンプホットドッグ
950円
ホットドッグ
780円
チリミートホットドッグ
850円
トッピング
スライスチェダーチーズ
150円
カオスチーズ
380円
ベーコン
200円
厚切りベーコン
300円
フライドエッグ
100円
アボカド
200円
パティ
500円
キノコソテー
220円
ハラペーニョ
135円
フライドオニオン
100円
ソース
バーベキューソース
150円
テリヤキソース
150円
サルサソース
150円
チリミートソース
200円
メープルソース
150円
自家製タルタルソース
200円
ご飯もの
loco moco
1,250円
ビーフオーバーライス
1,300円
サイドメニュー
フレンチフライ
400円
バッファローチキンウィング
900円
オニオンリグフライ
600円
プルドポークチーズフライ
900円
ローディッドフライ
900円
ハッシュポテト
550円
シーザーサラダ
800円
グリーンサラダ
650円
自家製プリン
400円
バニラアイス
300円
ストロベリーアイス
300円
チョコアイス
320円
クリームソーダ
580円
バニラシェイク
730円
ストロベリーシェイク
730円
チョコシェイク
750円
ドリンク
キリン零ICHI
400円
コカ・コーラ
350円
ジンジャーエール
350円
カルピス
350円
カルピスソーダ
350円
オレンジジュース
350円
メロンソーダ
350円
アイスコーヒー
350円
ウーロン茶
350円
ドクターペッパーチェリー
400円
7UP
380円
マルティネリアップルジュース
400円
ハワイアンジュース(各種)
450円
トニックウォーター
400円
ホットカルピス
400円
ホットウーロン茶
400円
ホットコーヒー
400円
ミネラルウォーター
250円
オアシスオレンジ
480円
カシスウーロン
480円
ファジーネーブル
480円
レゲエパンチ
480円
リンダリンダ
480円
アイオブザストーム
480円
ラグワゴン
480円
480円
バラモア
480円
アルコール
ビール各種
600円~
サワー各種
430円~
グラスワインワイン
300円
ボトルワイン各種
3,400円~
カクテル各種
500円~
ウィスキー水割り各種
420円~
ウィスキーロック各種
420円~
ウィスキーボトル各種
4,200円~
焼酎水割り各種
430円~
焼酎ロック各種
430円~
焼酎ボトル各種
3,300円~