【お秀茶屋】350年変わずに会津伝統の味を今に伝える老舗。なのにお値段もお手頃で神すぎるお店@福島県会津若松市

福島県、会津若松。

歴史が色濃く残るこの街は、冬が訪れると、すべてが厚い雪に覆われる。

だから会津に行くなら、今のうち。

どこまでも青くすみわたる秋空のもと、雪が降る前に会津若松へとGoToしてきた。

お秀茶屋 道路標識

お秀茶屋(おひでちゃや)

ウィンタースポーツなんてやらないし、冬でもサマータイヤが当たり前である私にとって、雪はまさに自然の驚異そのもの。

だって雪って寒いし滑るし、ちょっとコワい。

とはいえ、茨城県でも年に何回か雪が降ることがあり、そんなときは「あー、この雪のせいで、会社が休みになんねーかなぁ・・・?」と、いつも自然に対する畏敬の念を抱かずにはいれない。

 

やぁ諸君、ごきげんよう。

ぼっちメシ研究所のジャムだ。

お秀茶屋 お秀茶屋の外観

秋が深まり、やがて訪れる冬の気配を色濃く感じる。

もうすぐ会津には、雪の季節が訪れる。

お秀茶屋 看板

看板には「創業 宝永年間」の文字。

延宝年間とは、西暦1671年から1681年までの10年間。

こりゃまたずいぶんと昔のことになりますな。

で、現在が2020年だから、ざっと計算すると、えー・・・っと。

あー・・・

 

あぁ、だいたい350年以上も前にこの店ができたことになるってワケなのですよ。

350年前から変わらぬ味を、令和の時代に伝える老舗中の老舗「お秀茶屋」でのお食事。

お秀茶屋 看板

店の前には、まるで両手を広げた着物のような看板。

ヤッコダコっぽい形。

この形は串にさした田楽を模しているのだろうか。

それにしても文字を書くにはずいぶんと不便な形をしている。

にもかかわらず、情報量がめちゃ多い。

お秀茶屋 店内

店に入るとすぐ正面に囲炉裏端があり、そこでご主人が田楽を焼いていた。

パチッ・・・パチ・・・っと真っ赤な炭がはぜる。

田楽の味噌を焦がす香ばしい匂いにいきなりノックアウトされた。

これは美味そうだ。

「いらっしゃいませー、お好きな席へどうぞー」

柔らかいご主人の声に案内される。

350年の歴史を誇る老舗とはとうてい思えないような、ゆるーい雰囲気と、それに特農のケムリが店の中に漂う。

お秀茶屋 店内

先客は1組。

60代とみられるご夫婦が端のテーブルに座っている。

近くのテーブルに座ることで、せっかくの2人の熱い愛の語らいの時間を邪魔してしまっては申し訳ない。

とういわけで、座敷へと上がらせてもらうことにした。

お秀茶屋 メニュー

こちらがメニュー。

すべて3桁円という破格のお値段設定。

お秀茶屋 メニュー

お秀茶屋の名物の田楽。

餅、生揚、ニシン、こんにゃく(秋は里芋)のセットだ。

これを食べるために会津にやって来た。

お秀茶屋 店内

座敷は4卓。

新型コロナウイルスの流行前は6卓だったが、感染拡大防止のため卓の数は4となり、間に仕切りが設けられていた。

お秀茶屋 お茶

備え付けのポットからお茶をいただく。

お秀茶屋 店内

店内に飾られたサイン色紙。

人気のお店なら別に珍しい光景でもないが、この店のサインは別格なのだ。

お秀茶屋 手塚治虫

まずはコレ。

手塚治虫氏のサイン。

というかイラスト。

同氏が、はじめてアシスタントとして採用した3人の若者たちは、みな会津若松の出身だった。

彼らは仕事中、いつも故郷の会津若松の話をしていたという。

そのせいか、いつしか手塚氏も会津若松につよい興味を持つようになる。

そして昭和34年、アシスタントの2人を伴い会津を訪れた。

ちなみに、この時のアシスタントの1人、笹川ひろし氏は、現在タツノコプロの顧問になっている。

お秀茶屋 永六輔

こちらはラジオの神様、永六輔氏のサイン。

永六輔って、浅田飴のアノ人だ。

お秀茶屋 富永一郎

お笑いマンガ道場でおなじみの富永一郎氏のサイン。

余白の使い方、活かし方がとてもうまい。

赤い色を絵の中心に添えたのは、日の丸を意識してか、しないでか。

ちなみに、隣のサインは立川談志氏のもの。

ほかに大島渚氏や、前田吟氏のサインなど、そうそうたる面子が並ぶ。

お秀茶屋 山下清 サイン

こちらは裸の大将でよく知られている山下清氏のサイン。

それにしてもナゼこの山間の街、会津若松で魚のイラストを描いたのだろう?

それも3匹も。

まぁ、天才の考えることってのは、私のような凡人にはおよそ想像もつかないものってことだ。

お秀茶屋 山下清

この写真の中央の人物が山下清氏。

この写真を眺めているとき、ふっとさもしい考えが頭をよぎった。

「この写真やサイン色紙って、売るといったいいくらになるんだろう?」

なんせこちとら生まれも育ちも貧しい人間なので、ついついそんなゲスいことを考えてしまう。

いや、生まれや育ちのせいばかりではない。

だって今現在も貧しいままだ。

つまり貧しさの現在進行形。

貧しing。

お秀茶屋 田楽

さて、10分ほどで田楽がやって来た。

運ばれてくる前から、味噌の香ばしいイイ匂いをぷんぷんとさせていた。

お秀茶屋 田楽

角度をかえてもう一枚。

左の2串はお餅。その隣の2串は生揚げ。右端の1串はニシン。

上の1串はサトイモ。

お秀茶屋 田楽

色つやが良くって、なにしろ食欲を掻き立てるすばらしい香り。

お秀茶屋 サトイモ

田楽は、注文を受けてから1本1本を焼き上げる。

お秀茶屋 サトイモ

このサトイモ、とても美味しい。

やっぱ旬の野菜って問答無用で美味いよ。

それに、サトイモって大好きな食材だし。

これだけでも何本もイケちゃいそう。

お秀茶屋 ニシン

江戸時代後期に、会津藩は蝦夷地(今の北海道)の警備にあたっていた。

その藩士たちが、海産物の干物でも持って帰って来たためなのだろうか、会津地方は内陸部の山間にありながら、やたらと海の物を使った名物料理が多い。

ニシンの山椒漬けとか、棒ダラ煮とか、スルメイカとか。

お秀茶屋 田楽 ニシン

ニシンに塗られている味噌はほんのわずか。

炭火で炙ったスモーキーな風味が鼻の奥をくすぐる。

なんだか日本酒をいただきたくなってくる。

お秀茶屋 田楽 味噌

餅には米の粒感と残っている粗い仕上がり。

その舌触りはトロンとなめらかで、もち米の風味と、軽く焦げた味噌の香りはこうばしくて、もうたまらない。

それにしても、味噌と餅って意外と合うもんなんだな。

お秀茶屋 生揚

冬場になると、どこのコンビニでも必ず見かけるおでん

そのおでんの元になったのが、この田楽。

なんでも、田楽が焼きあがるまでのホンのわずかな時間さえも待てないせっかちな江戸っ子のために、あらかじめ煮込んで作る、現在のおでんのスタイルが考案されたんだとか。

その煮込み田楽は、田楽の頭に「お」を付けて、おでんと呼ばれるようになった。

田楽のがくの方は、どっかにいっちまったらしい。

お秀茶屋 田楽味噌

生揚げの串の下には、皿の肌に味噌が塗られていた。

味の濃さを調整するためのエクストラ味噌ってわけか。

細やかな心配り。

せっかくなので、この味噌をたっぷりと使わせてもらった。

お秀茶屋 田楽 お餅

かの新選組、土方歳三もこの店の田楽を楽しんだらしい。

土方歳三って、たしか北海道でウィンチェスターを片手にアイヌの隠し金塊を追っている人だよね?

お秀茶屋 手塚治虫

あらためて手塚治虫氏のイラストを眺める。

この表情がとてもいい。

八の字に下がった2つの眉毛、かるく伏せた2つのまぶた、ゆるく上がった口もと。

たったの5本の線で、じつに味わい深い表情を描き出している。

リラックスしていて、満足げで、酒と田楽を存分に楽しんでいるってのがヒシヒシと伝わってくる。

たった5本の線だけで、心の模様をこれほどまで繊細に表現するのって「なんかスゲぇなぁ」と思った次第。

なんとも見事な腕前だ。

ひょっとしてこの手塚治虫って人、けっこう絵が上手んじゃないの?

お秀茶屋 キリンレモン

ラムネを注文したが、あいにくとラムネは夏の間だけの提供とのこと。

そういえば、ラムネってなんか夏のイメージだな。

なんでだろう?

かわりにサイダーを注文したら、キリンレモンが届いた。

お秀茶屋 栓抜き

栓抜きなんて、久しぶりに見た気がする。

お秀茶屋 店内

2人連れのご婦人が来店。

80代後半とみえるおばあちゃんとその娘さん。

おばあちゃんは車椅子にのっている。

2人が、店の入り口の段差を超えるのにてこずっていると、女将さんが一緒になって車椅子を持ち上げて、テーブルへと案内する。

人力バリアフリー。

なんちゅーか、普段着の親切。

なんだかいいなぁなどと思いながら「まっさきに手を貸すのは自分だったのではないか?」と思いあたり、自分の気の利かなさに情けなくなる。

お秀茶屋 店内

かくしてご婦人2人はテーブル席に腰を落ち着けた。

娘さんがおばあちゃんに尋ねる。

「おばあちゃん、(注文は)どうする? いつものでいい?」

それにおばあちゃんが答える。

「うん、いつものがいいねぇ・・・」

なるほど、なるほど。実になるほどだ。

この店の味噌田楽の味は、きっとあのおばあちゃんが子供のころからずっと慣れ親しんできた味なんだろう。

さらに、おばあちゃんは言葉を続ける。

「いつもの・・・かけそば

 

 

 

・・・え!?

 

え、田楽じゃないの・・・?

お秀茶屋 田楽の餅

田楽ってのは、ようは食材に味噌を塗って焼いただけ。

飽食の時代に生きていて、過剰な脂と過剰な塩分にまみれた不健康な食生活を送っている私にとって、そこまで美味いってこともはない。

いや、間違いなく美味いんだけど、しかし、それは驚くほどのものじゃない。

だいいち、わたしは田楽ソムリエってワケでもないから、世の中にある他の田楽とくらべて、ここの田楽がどれほど美味いのか、そこんとこがピンとこない。

お秀茶屋 田楽の串

ただ、この味が350年前の昔からずっと変わらず受け継がれてきた会津若松の味なんだな、と思うとじつに感慨深い。

まさに素朴としか言いようのない味噌田楽の一本一本が、この会津若松のなんだなぁ、なんておセンチな思いが頭をよぎる。

その宝を、今でも800円で食べることができるなんて、素晴らしすぎる。

お秀茶屋 キリンレモン

キリンレモンはシュワシュワして、とても美味しかった。

いつの日か、この店の田楽を日本酒で楽しみたいものだ。

手塚治虫氏が残した、あのイラストのように。

お秀茶屋 田楽を焼くご主人

帰るころには店内はすっかり満席。

店の調理場といえば、この囲炉裏端だけ。

「ごちそうさまでした。美味しかったです」と伝える。

「ああー、どうもー、ありがとうございました」

老舗なのに、気取ったところはまったくない。そんなトコロがとてもいい。

長く、深く、この地の人々に愛される理由の一端をすこしだけ垣間見た気がした。

ちなみにお会計は、田楽800円+サイダー150円の合計950円。

千円札でなんとおつりが来る。

神かよ!

お秀茶屋 会津武家屋敷

食後は近くにある『会津武家屋敷』を見学。

だいぶ前にマンガ『シグルイ』を読んで、武家というか、封建制の社会の価値観についてずっと興味を持っていた。

それを踏まえての武家屋敷の見学。

所用時間は60分から90分ほどで、けっこう面白かったし、なにより勉強になった。

それと『鬼滅の刃』の人気のせいなのか、ファミリー客のお子様たちはみながみな木製の模擬刀を持っていて、何んとかの呼吸をしたりしていた。

個人的には『シグルイ』の「無明逆流れの方がカッコイイと思うのだが、まぁそんなことは子供に言っても分かるまい。

お秀茶屋 外観

武家屋敷からの帰り道、ふたたびお秀茶屋の前を通った。

味噌の焦げる美味しそうな匂いに誘われたのか、観光客らしき若いカップルが店の前で立ち止まり、店内の様子を遠巻きに伺っていた。

お秀茶屋 看板

戊辰戦争や、磐梯山の大噴火とか。

そんな会津の歴史を、この店はこの場所でずっと見つめていたのだと思うと「なんか、やっぱスゲーね」なんて思う。

お秀茶屋 栄川

なんだか日本酒が飲みたくなって、普段は飲まない酒を買ってみた。

「会津磐梯の名水仕込 栄川」

 

あ、この日は裏磐梯でキャンプしてきました。

お秀茶屋の基本情報

お秀茶屋の場所はこちら

駐車場はたぶん6台ほど。

駐車場がいっぱいでも、ご主人に相談すればなんとかしてくれそうな雰囲気だった。

ちなみに、お秀茶屋から会津武家屋敷までは250mの距離。

歩きで3分ほど。

お秀茶屋の基本データ

 お秀茶屋の基本データ 

 住  所 

 〒965-0813 福島県会津若松市東山町大字石山天寧308

 電 話 

 0242-27-5100

 営業時間 

 10時00分~15時00分
 ★ 2020年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため11:00からの営業

 定 休 日 

 火曜日
 水曜日

お秀茶屋のメニュー

※ 価格は2020年のもの。

税込み価格です。

 お秀茶屋のメニュー 

 お食事 

 田楽
  800円
 納豆餅
  750円
 胡桃(くるみ)餅
  700円
 月見そば
  600円
 ざるそば
  550円
 かけそば
  550円
 冷しかけそば
  550円
 こんにゃくおでん
  350円

 飲み物 

 ビール(大)
  600円
 酒一合
  300円
 ウーロン茶
  150円
 オレンジジュース
  150円
 サイダー
  150円
 ラムネ
  150円