社会人になってみると、連休ってモノのありがたさがシミジミと骨身に染みる。
連休は、仕事にまつわる日常の煩わしさから体を開放してくれて、まるで心に翼が生えたかのような自由な気持ちさせてくれる。
ああ、連休ってば、なんて素晴らしいのだろう!
しかし・・・だ。
しかし、連休になってみると特にコレといってやることがない。
休みに入る直前までは「今度の休みにはアレしよう」とか「コレしよう」とか、頭の中でアレコレと思いを巡らせているのだが、しかしそれらを具体的な計画や行動に落とし込めないせいで、いざ連休が始まってみると、なーんにもない日々を過ごすことになる。
空っぽで空虚で無意味な休みの日々が、ただひたすら続く。
そうして気が付けば、連休明けの最初の出勤日の朝を迎えているってな具合。
いやぁ、こりゃなんとも不毛。
じつにお粗末だ。
そして2021年のお盆休みは、日本全国コロナ禍という最悪な状況の中で迎えることになった。
コロナ第5波のピークと重なったため、世間には濃厚な自粛ムードが漂っている。
せっかくの連休だけれども、遠出をしたり、県境をまたぐ移動をしたりするのは少々はばかられるような空気感。
なんともタイミングが悪い。
そんな世間様の雰囲気はさておいて、こちらはいつもの通り、特にやることも無ければ行きたいところも無い。
あまりにもやること無さすぎて、思わず途方に暮れてしまうくらだ。
別に自粛しようってわけでもないのだが、何もすることが無いので、結果としてステイホームな毎日を過ごす。
こんなパンデミックな世の中も「何もない連休」を過ごすことに対してちょうどいい言い訳にできるから「コロナってのもそんなに悪くないんじゃないか?」と、そんな不謹慎で不健全な考えが頭をよぎる。
いやいや、そんな発想はイカン。実にけしからん!
そんな発想を思い浮かぶってのは、もうコロナでどうこうって以前にまず性根が腐り始めている証拠だ。
これはなんとかしなくては。
レストラン ツインハート
それに家に引きこもって「うわーん! なーんにもやる事ないよーぅ!」なんて、独りでグネグネしていてもなーんにも始まらない。
そんな有様じゃ、エキサイティングなイベントなんて起きやしないし、ステキな出会いなんてのも夢のまた夢。
よし! まずは部屋から出て、そしてどこかに出かけてみよう!
と、鼻息荒く意気込んでみても、これといって行くアテが無い。
でも、ああ、そうだ。
そういえば、ちょっと遠くに気になるお店があったな・・・
やぁ諸君ごきげんよう。
ぼっちメシ研究所のジャムだ。
と、いうことで、今回ご紹介するお店は『レストラン ツインハート』
茨城県の常陸大宮市にあるお店だ。
場所は道の駅かつらのすぐ近く。
このあたりは「関東の嵐山」なんて呼ばれたりする那珂川(なかがわ)の中流地域。
山々の間を縫うように川が流れ、そしてわずかな平野部に畑が広がっている。
まさに日本の原風景ともいえる眺めで、まるで『日本昔ばなし』のような風景だ。
お店の外観
こちらがお店の外観。
ぶっとい丸太を組み合わせて作ったログハウス。
観光地のペンションなんかで見るような「外壁に丸太のパネルを張り付けてログハウス風に仕上げてみました」ってなヤワなもんじゃない。
ガチのガチで丸太を組み合わせて作られた、ウッド成分100%のログハウスだ。
存在感がものすごい。
このログハウスを見ることができたってだけでも、ここに来てよかったと思える。
店内の様子
店に入ると「いらっしゃいませー」と上品で陽気な女性に出迎えられる。
この店のママさんだ。
こちらのお店はご夫婦で営まれていて、ホールはママさんが担当し、ご主人は料理に専念する。
店の入口で靴をスリッパに履き替えるシステムで、履いていた靴は棚に上げる。
さて何処に座ろうか、と店内を見まわしていると「どうぞ、お好きなテーブルへ、お外の席もお使いいただけます」と声をかけられる。
ほへ? お外の席だって?
ということは、テラス席もあるのか? おお、いいじゃないか。
二階へと上がる階段の前にはメニューが書かれたホワイトボードが設置されている。
ランチメニューはA~Hの8種類で、ステーキを除けばどれもが1,500円均一。
しかも税込みと言うんだからシビれるぜ。
ママさんによると、お店のイチオシは「C 肩ロースブレゼ(とろーり煮込み)」とのこと。
なるほど、じゃ、それで決まりだ。
店の中はかなり広く、いくつものテーブルが並ぶ。
床もピッカピカに磨き上げられていて、このログハウスがとても大事にされていることが伝わってきた。
こちらがテラス席。
あいにくと雨の日だが、その雨に濡れた木々がいっそうと濃い緑色と木の香りを放ち「雨の日のテラス席ってのも悪くないな」なんて思えてくる。
お水を運んできてくれたママさんに、さっそく「肩ロースブレゼ」を注文する。
ライスかパンを選べるということなので、迷わずライスでお願いした。
写真を撮ってもいいですか? と尋ねてみると、「はーい、どうぞどうぞ! ご自由にどうぞ! お店の中も撮っていってくださいね!」
と、写真撮影に対してものすごくウエルカム。
あらためて店内へ。
丸太むき出しの店内はウッディ濃度が高め。
木でできた強固な要塞の中にいるようで「守られている」という安心感と非日常感があふれていて、なんとなくスローライフなんて単語が思い浮かぶ。
パシャパシャと写真を撮っていると、ママさんが「お二階もあるのでどうぞ!」と勧めてくれた。
しかし、現在は2階席は使われていないそうなので写真撮影は自粛した。
でも、きっといい眺めなんだろうなぁ。
肩ロースブレゼ
テラス席へと戻り、料理の到着を待つ。
カトラリーはナイフ、フォーク、スプーン、さらにお箸と、一通りが揃えられている。
まずはサラダ、スープが運ばれてきた。
提供時間が早い。
サラダには和風ドレッシングが振り掛けられていた。
スープはトマトベース。
タマネギとトマトの旨味の出る食材をベースにして数種類のカット野菜が入っている。
ジャガイモ、タマネギ、シイタケなど。
ビーフとチーズが使われているようで、えらくコクがある。
メインの「肩ロースのブレゼ」が運ばれてきた。
付け合わに添えられたブロッコリーとニンジンのグラッセに囲まれている。
驚いたのは肉の大きさだ。
なんといってもこの標高。
まるで南米キアナ高地のテーブル・マウンテンのごとき様相を呈する。
いやいや、これは何かの錯覚か、もしくは幻なんじゃないか?
山と川と緑に囲まれた自然豊かなロケーションのお店で出てくる料理といえば「けっして豪華ではないけれど、素朴な食材を使った郷土料理」的な、たいていはそんなのが出てて来るのが相場。
それこそが王道というか、セオリーってもんだろう。
なのに、いったいなんだってこんな肉々しい料理が出てきたんだ!?
ナイフで切るために巨大な肉塊にフォークを添えると、フォークをのせた部分の肉がとろん・・・っとほぐれ、ソースの中へと崩れ落ちる。
うーわ! コレむっちゃ柔らかい!
ソースはトマトがベースでアンチョビが効いている。
トマトとアンチョビって、意外と豚肉と相性がいいんだなぁ。
アンチョビが使われているからてっきりイタリアンな料理? かと思ったら「ブレゼ」というのはフレンチの技法で、もっとも難しい調理技法の1つなんだとか。
ついでにアンチョビってのは英語の呼び方というか言い方で、フランス語ではアンショビと言うそうだ。
ライスはかなりの盛りの良さ。
ママさんから「お替り自由なので、たくさん食べてくださいね!」とありがたいお言葉を頂いたが、お替りなどせずとも十分な量だ。
豚肩ロース。
肩はもっとも運動する部分であり、赤身と脂身がほどよく混ざっているため、豚肉らしさをもっとも味わうことができる部位。
つまり豚肉好きにとってはたまらない、豚肉の魅力と旨味がたっぷりと詰まった部位。
そんな肩ロース肉が、まるで山のように提供される。
ああ、マジ、こりゃたまらない。
緑に囲まれた自然の中で、優雅な昼食のひととき・・・と行きたいところだが、そんな余裕はない。
無我夢中になって肉を喰らう。
そこに優雅さなんてものは、これっぽっちもない。
フォークは皿と口の間を休むことなく行き来して、ただひたすらに肉を口の中へとピストン輸送する。
ママさんはとっても気遣いさん。
たびたび店内からテラス席へと出向いてきては「ご飯のお替りしてくださいね!」と何度も勧めてくれた。
このブレゼって、お米にもばっちり合うけれど、パンとも相性がよさそうだ。
あっそうか、だってこれフレンチだもん、パンに合うのは当たり前だ。
気が付くと最後のひと欠片を残すのみ。
美味い。
こりゃ美味すぎるぞ。
この「肩ロースのブレゼ」は、文句なしにおススメの逸品。
食後のコーヒーとデザート。
ここまで至れり尽くせりのこのランチが1,500円ってのはまさに破格としか言いようがない。
デザートはフルーツ盛り合わせ。
スイカ、バナナ、キウイ、メロン、リンゴ。
季節の果実を少しずつ。
いつの間にか雨は上がり、太陽の光が差してきた。
この盆休みも、いつものように連休のように、何か特別なイベントなんて起きないし、それに異性とのステキな出会いもない。
そんないつも通りの空っぽな連休だった。
でもこの店に来て、なんだか少し心が晴れた。
若鶏ソテーレモン風味
盆休みも終わった8月の下旬ごろ、ふたたび『ツインハート』を尋ねてみた。
前回ここに来たときの天気はあいにくの雨だったのだが・・・
なんと今回は、大雨だ。
目の前を流れる那珂川は水量マシマシ。
氾濫寸前の大迫力をライブで楽しませてくれる、まさに生粋のエンターテイナーだ。
「え、ちょ・・・? コレ、マジで大丈夫か?」
でも、このドキドキ感がたまらない。
この日は「若鶏ソテーレモン風味」を注文。
なんとなく今回はライスではなく、パンを選んでみた。
パンは、プレーンなタイプとゴマ入りの2タイプのバゲット。
ママさんは大雨を吹き飛ばすような陽気さで「どんどんお替りしてくださいねー!」と言い残して店内へと戻っていったが、お替りなんてする必要がないほどの山盛り。
続けてメインの「若鶏ソテーレモン風味」のご登場。
レモン風味と言うだけあって、柑橘系の爽やかな香りが立ち昇ってくる。
うん、いいぞ。
付け合わせのジャガイモ、ブロッコリー、ニンジンたちがお行儀よく並ぶ。
それに素揚げした黄色と赤のパプリカ。
色鮮やかで、カラフルで、目にも楽しい。
鶏肉のソテーには、あらかじめ切り分けられているので、自分で切る必要はない。
食べることにだけに集中すれば良いってわけだ。
ニンニクが効いたレモンソース。
レモンって、その強烈な酸っぱさばかりがクロースアップされがちだけれど、けっこう苦みもある食材だと思う。
そのせいか、意外と料理の中に自然となじませるのが難しくて、たいていその使い方は「レモンを絞って料理に振り掛ける」というような、ちょっとしたアクセントとして用いられるのがせいぜいだ。
しかしこのソテー、そんなレモンをソースのメインにして、それが鶏肉に上手に調和している。
つまり、美味いってこと。
今回は気まぐれでライスではなくパンを選んでみたけれど、このパンが美味い。
いや「今まで出会ったこともないような美味さ」ってんではなくって、どちらかというと「パン本来の美味さを極めました」って感じ。
バターが添えられている。
パンは何もつけずにそのまま食べても美味いんだけれど、せっかくバターがサーブされているのだから、使ってみることにした。
バターひときれをパンにのせて食べてみる。
驚いたことに、こいつがモーレツに美味い。
バターってパンに合うんだな!!
と、おそらく人類の誰もが知っているであろう当たり前すぎる事実に、今さらながら気が付き、そして驚いた。
バターの器はキンキンに冷やされている。
よく観察してみると、金属製のバター皿の表面のいくつもの穴が開けられていて、そこから冷気が出ている。
コレなんだろう? と不思議に思い、バターの乗った上皿を外してみると、下の容器の中には氷が敷き詰められていた。
なんでもこれはバター・クーラーというものだそうだ。
バターがグズグズに溶けないようにするための工夫であり、気づかい。
こんなカタチでバターを提供された経験なんて無かったので、そのおもてなしの心に感動する。
ニンジンのグラッセ。
前回は気が付かなかったけど、ニンジンは丁寧に面取りされている。
面取りのために切り落とされた端切れは、おそらくスープに利用されているのだろう。
いっさいの無駄がない。
こういうの最近はSDGsとかって言うんだろう?
鶏肉は小麦粉のコロモをまとっていて、これがソースとシメジを余さず口へと運んでくれる。
思い付きでパンにのせて食べてみた。
いやぁ、美味いっす。
最後はさらに残ったソースをパンを使って拭って食べた。
この日は大雨のせいもあってか、8月だというのに気温が22度と急激に冷え込んで、少し肌寒い日だった。
デザートと一緒に提供されたホットコーヒーの温かさが、体に染み入る。
魚のムニエル
8月が過ぎ、9月に入った。
秋の到来。
待ちに待った季節の到来だ。
いつものようにテラス席を使わせていただこうとしたのだが、しかしすでにテラス席はすべて予約されているとのこと。
がびーん! だ。
そのため、店内の空いているテーブルへと案内された。
9月に入ったとはいえ、まだまだ暑い日が続く。
この日も気温が30度近くまで上がった夏日。
なのでノンアルコール・ビールを注文してみた。
カラカラに乾いたノドに炭酸と苦みが染みわたる。
最近のノンアルコール・ビールって意外とあなどれないな、なんて思いながら料理を待っていると、ぞくぞくと客がやってきて、あっという間に店内の席を埋めていく。
ほどなくして運ばれてきた「魚のムニエル」
相棒はもちろんパンだ。
ムニエルは大き目の切り身が2つ。
ズッキーニやナスなどの夏野菜を使ったソースにバターが香る。
このムニエルって、なんの魚を使っているのだろう?
さっそくひとくち食べてみると、おお、これ・・・マグロだ!
バター風味のマグロって、ちょっと今まで味わったことが無い新鮮な味わいだ。
わき役のエビとアサリ。
いや「わき役」なんていったら失礼なほどエビはたっぷりの盛り付けられている。
味付けはシンプルに塩味。
バターの香りと、それになにか柑橘系の爽やかな香りが混ざっている。
背後から「失礼します」と、ママさんが声をかけてきた。
「パンお替りはいかがでしょか? パン、足りてますか?」
そりゃもう、十分に足りています。
あ、ここのパンって美味しいですね。すっかりファンになっちゃいました。
これはムニエルっていうよりも、マグロ・ステーキと言った方が実態に則しているかもしれない。
こんなマグロの食べ方もいいもんだ。
パンとの組み合わせも狂暴なくらいの美味しさ。
店内はほどよくエアコンが効いていて涼しい。
丸太を組み合わせただけのログハウスなのに、高い気密性と断熱性に驚く。
それにしても丸太って、こんなにピッチリと隙間なく組めるものなのか。
三度の飯より丸太が大好き! という丸太ファンの方たちは、ぜひ1度はこの店に行ってみるべきだろう。
ママさんによると、このログハウスはマスターとご友人たちが手作りされたものなんだとか。
え?
このログハウスって手作りなの?
マジかよ・・・スゲーな!
お店の入り口近くにアルバムがあり、このログハウスを作っている過程を記録した写真がおさめられている。
写真に写されているのは、ご主人とそのご友人たちが丸太を組み上げていく様子。
壁には断熱材のようなものはまったく使われていないようで、ホントに丸太だけで作られている。
驚くばかりだ。
サーロインステーキ
人体とはじつに不思議なもので、生命を維持するためのエネルギーが不足しだすと、そのとたんにお腹がグーグーと鳴りだす。
これは警告音。
おのれが今まさに餓死する直前だという客観的な事実を知らせてくれる。
なんともありがたい機能だ。
さっそくその警告に従い、腹を満たすことにした。
行く先はもちろん『ツインハート』だ。
この日は「サーロインステーキ」を注文してみた。
あいにくとパンは売り切れ、ということでライスを選択。
ホントはパンが食べたかったのだが、売り切れちゃったんだから仕方がない。
それが運命(さだめ)と言うならば、甘んじて受け入れよう。
10分ほど待つと「サーロインスステーキ」が到着。
かなりアツアツ。
ニンニクが香るステーキ。
シメジとトマトがのる。
お肉はちょっと硬め。
ステーキは上品な味付け。
こんな味付けも悪くはないのだけれど、おそらく「コショウやニンニクが効いたワイルドなステーキ」が好きな方には少しばかり物足りなく感じるだろう。
けっこう好き嫌いが分かれる仕上がりかもしれない。
残念ながら、私の好みにはちょっと合わなかった。
デザートとコーヒー。
正午を少し過ぎたころだが、すでに満席となっていた。
海の幸フライ
いつものようにテラス席へ。
なんだかもう、どうにもこのテラス席が気に入ってしまった。
この日は10月も終わろうとしていたころ。
なので、もう少し秋っぽい写真が撮れるかと思っていたけれど、秋の訪れはだいぶ遅れているようで、まだまだ緑の濃いめな風景。
とはいえ、空気はすっかり秋だ。
湿度は低くカラっとしていて、それに天気も上々。
とても気分がイイ。
お冷を運んできてくれたママさんに注文を伝える。
選んだのは「海の幸フライ」
それをパンでお願いした。
スープを飲みながら待つことしばし。
さあ「海の幸フライ」の登場だ。
フライはエビ、ホタテ、イカ、白身魚。
細かめのパン粉でサックリと揚がっている。
マヨネーズとレモン。
テラス席には秋らしい心地よい風が流れ、自然の光があふれている。
実に気持ちがいい。
そういえば、キャンプやバーベキューなど屋外で食べるご飯は美味しいなんて言われたりする。
お天道様の下で食べるご飯ってのは、何か格別に美味しくなるのか? または、ただそう感じるだけなのだろうか?
でもなんとなく、いつもよりも美味しく感じるような気がする。
そう感じる理由は、普段と違うシチュエーションで食事をするという非日常感がもたらすある種のエンターテインメント性が関係しているのかもしれない。
でも、屋外で食べるご飯を美味しく感じる理由って、本当にそれだけなんだろうか?
もっと別の理由はないだろうか?
人間は、直立二足歩行をする珍しい生き物だ。他に直立二足歩行をする生物なんていない。
われわれ人間にとっては、2つの足で立って歩くことが当たり前すぎて気が付きにくいが、なにしろ直立二足歩行というのは効率が悪い。
歩くにしろ走るにしろ、体を前進させるためには、上半身と下半身を反対方向にひねりながら前に進まなければならない。
この体をひねる運動は、まったく無駄な運動だ。
だって、いったいなんだって前に進むのに、体をひねらなきゃならないんだ?
なんとうも非効率的。
当然、このひねり動作のために、直立二足歩行は四足歩行よりも多くのエネルギーが必要になる。
ただ前に進みたいだけだというのに、余分なエネルギーが要求される。
なんとも燃費が悪い。
四足歩行をする他の動物たち、たとえばウマやイヌやネコは、こんな無駄な動作はしない。
彼らは体をひねらずともまっすぐに歩き、そして走る。
体を前へと進めるだけなら、わざわざ体をひねる必要はないし、体をひねるための無駄なエネルギーを必要とせず、効率よく進むことができる。
前をすすむという単純な動作に対して貴重なエネルギーを無駄に費やす理由なんてないのだ。
さらに悪いことに、直立二足歩行は四足歩行よりも安定性を欠くので、ちょっとでもバランスを崩せばすぐに転倒する。
しかも人間の頭は他の動物たちよりも高い位置にあるため、転倒の際には頭を強く打ち、大きなケガを負うリスクも高くなる。
そう考えると、うーん、なんだか直立二足歩行ってあまりイイところが無いぞ。
なんだって人間は直立二足歩行なんて非効率な歩き方を始めたのだろう?
その正確な理由は分かっていない。
しかし、なんでも一説によると「視点を高くすることで、遠くまで見渡せるようるにするため」ってな話もあるそうだ。
たしかに2本の足で立ち上がれば、四本足で地面に這いつくばっているよりも遥かに遠くまで見渡すことができる。
その利点は「遠くにいる敵や、獲物の存在をいち早く発見することができる」ってこと。
この能力は、人類が誕生した土地(アフリカのサバンナ)で生き残るためには、とてつもないメリットだろう。
なんといっても人間という生物は、他の野生の動物たちに比べると、とてもか弱い生き物だ。
たとえばライオンたちのような鋭い牙や爪は持っていないし、サイたちのように身を守るための硬い外皮も持っていないし、チーターたちのような瞬発力も無ければ、ゾウたちのように他を圧倒的するような巨大な体も持っていない。
さらに人間の持っている筋力はとにかく非力で、人間の親戚筋にあたるチンパンジーたちにすら遥かに及ばない。
ないない尽くし。
とてもじゃないが猛獣たちと戦うなんてことは無理。
よって人間のサバンナにおける生存戦略は「猛獣を見たらすぐに逃げろ」ってことになる。
アフリカのサバンナは、なにしろガチンコな弱肉強食の世界だ。
獰猛な大型の猛獣たちががそこら中にウヨウヨしている。
そんな猛獣たちから見れば、人間は弱すぎる生き物。
なんなら単なるエサのひとつ。
しかも大して肉も付いていない痩せたエサだ。
一方、そんなか弱き人間の側から見てみれば、大型の猛獣たちの存在は脅威であり、恐怖そのものに他ならない。
だから人類は、四本足歩行のロー&ワイドなスタイルのカッコ良さを捨て、直立二足歩行という独自のスタイルを取り入れて視界の確保に努めた。
猛獣たちの存在をいち早く知るために。
その頃の人類が持っていた武器、というか道具といえば、ちょっぴり尖った石器くらいのもの。
ドラクエの初期装備「ヒノキの棒」よりは多少マシかもしれないが、攻撃力にそれほど大きな違いはない。
そんな貧弱な装備だけでサバンナの猛獣たちを相手にサバイバル生活を送るなんて、どう考えても無理ゲー。
完全にゲームバランスの調整に失敗しているとしか思えない。
人類は、そんな無理ゲーなサバイバル生活を長い年月のあいだ続けてきた。
それがどらくらい長い期間だったかと言うと、実に200万年以上。
ちゃちな石器と、遠くまで見渡せる視界。
その2つだけを頼りに、200万年以上もの長きに渡り、人間たちは生き抜いてきた。
現代社会に生きる私たちがごく普通に日常生活を送っているかぎり、野生の猛獣に襲われる危険性はほぼ無いだろう。
だから猛獣たちに怯えながら、その存在をいち早く察知するために「遠くまで見渡せる視界を確保する」必要性もまったく無い。
しかし本能にはしっかりと刻まれている。
「遠くまで見渡せる視界を確保する」ことはイコール「身の安全を確保する」ことなのだと。
それは、200万年以上の長い長いサバイバル生活を経て、すっかり人間の本能の奥の奥にまで刷り込まれている。
さて、そんなことを踏まえて。
おそらく「見晴らしの良い場所」というのは、本能が「安全な場所」だと認識するのではないだろうか。
誰だって食事は安全な場所で、落ち着いた気分でリラックスして食べたいと思うのが普通だろう。
わざわざ危険な場所や、落ち着かない気分で食事をしたいと考える人はあまりいない。
そんな状況では、どんな素晴らしい料理も美味しくなんて感じないだろうし、なんなら味すらしないかもしれない。
だから屋外のように遠くまで見渡せる場所、つまり人間の本能が「ここは安全だ」と納得した場所、そういう環境で食べる食事は、普段よりもずっと美味しく感じるのではないか・・・なんて考えてみた。
いや科学的な根拠なんてまったくないけど。
それどころか、これは暇を持て余したぼっちの妄想だ。
ほんとのトコロはただ単に、太陽の光や風の心地良さなんかダイレクトに感じられるシチュエーションが、食事をより美味しいと錯覚させているだけなのかもしれない。
コーヒーとデザートを運んできてくれたママさんに「パンは手作りしているんですか?」と聞いてみる。
するとママさんは「エレーヌというパン屋さんに、食事に合うように特別にパンを作ってもらっているんですよ」と教えてくれた。
なるほど『エレーヌ』というパン屋さんか、さっそく帰りに寄ってみよう。
関東の嵐山
この日はとても天気が良かったので、少しばかり散歩してみることにした。
先に書いた通り、この辺りの地域は関東の嵐山なんて呼ばれている。
私はこの「関東の嵐山」のような「■■の○○」って言う言い回しがとっても好きだ。
たとえば大豆。
大豆は「畑のお肉」なんて呼ばれていて、まさに「■■の○○」っていう言い回しのフォーマット通りの表現。
うん、実に良い。
他に、たとえばアボカドは「森のバター」
また牡蛎(カキ)は「海のミルク」。
それにドンブリなら「畑のキャビア」。
うんうん、ものすごく良い。
この「■■の○○」って言い回し中でも、格別にお気に入りなのが「東洋の○○」という表現だ。
たとえば「東洋の巨人」「東洋の摩天楼」「東洋のピカソ」「東洋のマチュピチュ」
そんな言葉を聞くたびに、ワクワクとする。
たとえば東洋の巨人(=故ジャイアント馬場氏)を町で見かけたとしよう。
その時、誰もがきっとこう思うはずだ。
すっげー! さすが東洋の巨人って言うだけあってデケェな!!
さすがは東洋のNo.1だ! と素直に納得し、そして感動する。
しかしその感動の直後、もしくは感動の最中にある事実に気が付く。
「え、東洋の中で1番ってことは・・・じゃ、世界にはもっとデカい人がいるってのか・・・!?」と。
目の前にある東洋1のモノに驚いたり、その素晴らしさに感動したりしているその真最中。
まさにその最中にもっとすごいモノの存在をそこはかとなく漂わせる。
「東洋の○○」とい表現は、そんなもっとすごいモノの存在を言外に匂わせ、それとの出会いを予感させてくれる。
それはまるで「世界には、もっとスゴイものが在るんですよ・・・」と、首筋に息がかかりそうなくらいの生々しい距離で、そっと耳元で囁いてくるようなイヤらしさ。
遠回しに好奇心をくすぐってくるような、そんなイヤらしさ。
しかし、そんなイヤらしさこそが「東洋の○○○」という表現の最大の魅力なのだ!!
ああ、なんて素晴らしい・・・なんて最高なんだ。
いや、まぁ、ただそれだけの話なんで、特にこれ以上は広がらない話なんだけれども。
さっそく帰り道に『エレーヌ』に立ち寄ってみた。
あいにくパン屋さんの商売のピークであるお昼時をすっかり過ぎてしまっていて、商品は残りわずか。
『ツインハート』に卸しているパンは店頭では販売していないようだったので、いくつかの総菜パンを買って帰った。
美味かった。
レストランツインハートの情報
レストランツインハートの場所はこちら
駐車場はお店の前に10台から12台分。
お店は大きな通りから少し入ったところにあるため、場所がちょっと分かりにくいかもしれない。
この小さな看板が目印し。
看板に沿うように細い路地に入る。
こんな路地。
あとは道に沿って行けばOK。
細い路地なので気を付けて。
民家の向こう側が駐車場(砂利敷き)。
住 所
〒311-4503 茨城県常陸大宮市野口1121−1
電 話
0295-55-4511
営業時間
11時30分~15時00分
17時00分~21時00分 ※ ディナーは予約制
定 休 日
火曜日
水曜日
レストランツインハートのランチメニュー
※ 価格は2021年のもの。
ランチメニュー
A 牛ヒレステーキ(120g)
2,700円
B 牛サーロインステーキ(170g)
2,500円
C 型ロースブレゼ(とろーり煮込み)
1,500円
D ハンバーグ(デミソース)
1,500円
E ポークカツレツチーズ焼き(やわらかトンカツ)
1,500円
F 若鶏ソテーレモン風味
1,500円
G 魚のムニエル(白身魚)
1,500円
H 海の幸フライ(魚、ホタテ、エビ、イカ)
1,500円