令和2年1月2日。
日用品の買い出しのため、日立市のホームセンターに立ち寄った。
近くには、かねてから気になっていたラーメン屋「らーめん千歳」がある。
買い物を済ませると、ちょうど昼時の時間だ。
らーめん千歳
やぁ諸君、ごきげんよう。
ぼっちメシ研究所のジャムだ。
今回のランチは、国道293号線沿いにあるラーメン屋「ラーメン千歳」だ。
といっても、我ら茨城県民にとっては293号線なんて、いったいどこにあるのか、いまいちピンとこない。
293号線とは、東海村から日立市に入ってすぐのところ、久慈川沿いに国道6号線と245号線を結ぶ道路。
おさかなセンターの近く。日立南ドライブインや、ホームセンターのカインズホームが立ち並ぶ通り。
外観
らーめん千歳の外観。
なんとも可愛らしい小さな店。
そして、その可愛らしい外観とはうらはらに、主張が強い大きな看板。
いわく「懐かしの醤油味 らーめん千歳」。
この店の前の通りは、休日になると、信号につっかえたクルマたちが、長い渋滞を作り上げている。
私もよくその渋滞に巻き込まれ、渋滞のクルマの中からこの店の外観を眺めることがたびたびあり、ずっと気になっていた。
歩きで千歳に向かうと、店に向かって右側に4、5台ほどの駐車スペースがあることを知った。
千歳と書いて「ちとせ」。
北海道の千歳空港と同じ読み。
ちとせ、とは「鶴は千年、亀は万年」にちなんだ、縁起のいい言葉らしい。
お正月らしく、店の前には門松が飾られている。
「松は千歳を契り、竹は万代を契る」
これも千歳にちなんだモノなのか?
と、思ったが、冷静に考えてみれば正月に門松は普通のことだった。
ラーメン屋は、かくあるべし。
と、そんな主張をしているような赤い暖簾。
クラシック。なんとも風情がある。
店先の張り紙によると、元旦から営業をはじめているようだ。
お店の中の様子
「こんにちわー」と赤い暖簾をくぐって店内へ。
「いらっしゃいませー」と、ご年配のご主人に出迎えられた。
カウンターの向こうには女将さん。
店内は、店の外見から想像した通りのコンパクトさ。
正月2日の午前11時なんて時間だからだろうか、他の客の姿はなかった。
さっそくカウンターのすみっこに腰を下ろすと、ご主人かお水を出してくれた。
大将も、女将さんもニコニコと優しい笑顔を浮かべていて、とても感じがいい。
ご主人は60代ほど。いっぽうで女将はだいぶお若いようだ。
なんとなく「美魔女」なんて言葉が脳裏をかすめる。
色白で、とてもお美しい女性だった。
カウンターにたて掛けられているメニューを拝見する。
ラーメンが600円、それにカレーライスが500円というのは、私のような庶民には嬉しいお値段。
さんざん迷って、セットメニューの「A.ラーメン定食(ラーメン、モツ煮、ライス、香物)」860円を注文する。
注文を受けると同時に、ご主人は厨房に入り、調理を始める。
奥には6人掛けの小上がりがひとつ。
南向きの窓からは、午前中の陽が差し込み、6人掛けの小さな卓を神秘的に照らし出していた。
4人掛けのテーブル。
店は南西向きなので、陽の光がよく入る。
外から想像していたよりも、店内はずっと明るい。
ラーメン定食(ラーメン、モツ煮、ライス、香物)
5分と経たずにラーメン定食が配膳された。
運ばれてきたラーメンは、文句なしに「懐かしい」ルックスだ。
丼の真ん中には、ナルト。
昔ながらの懐かしいラーメン。
具材はシンプル。
ネギ、ワカメ、メンマ、チャーシュー、それに「の」の字を巻いたナルト。
ラーメンにワカメは必須の具材。
海苔よりもワカメのほうが断然好き。
メンマ。
たいてい、どこのラーメンにも入っていて当たり前のメンマ。
だから、特別に懐かしいということは無いハズなのだが、なぜか「懐かしい」と、思ってしまう。
このラーメンの具材のなかで、唯一と歯ごたえを提供してくれる名わき役。
ナルトとは対照的に、「の」の字に巻かれていないチャーシュー。
シンプルなラーメンの中にあって、その存在感はバツグン。
ラーメンのシンボル的な存在。チャーシュー。
なんといっても、貴重な動物性たんぱく質。
透明感のあるスープ。
さっそくレンゲでスープすくい上げて、一口すする。
驚いたことに、このスープ、さっぱりとした見た目に反して、さっぱり系ではない。
だが、コッテリと言うよりも、どちらかと言えばオイリー。
この油感は豚の脂だろうか?
けっこうクセが強いスープで、レトロなルックスから想像した味からは、かなりかけ離れている。
一見、おっとりしているように見えて、実はその性格はかなり個性的、または攻撃的。
見た目とのギャップに、戸惑いを覚える。
このラーメンをうまく表現する言葉が見つからないが「懐かしい醤油ラーメン」とは、ちょっと何かが違っている気がする。
麺は細め。
麺をすくい上げて、すすり込む。
こちらは期待していた通りの味。
この味は、私が「懐かしいラーメン」と認識できる味の範疇に入っている。
餃子がでてきた。
驚いたことに、餃子は羽根つき。
餃子は白い皿の中で、薄く繊細な翼をめいっぱい広げている。
「懐かしい味」を看板にしているが、その実、今時の味をちゃんとキャッチアップしている。
餃子は醤油とお酢でいただいた。
羽根はパリパリで、皮はモチモチ。
餃子の餡は、野菜よりもひき肉の分量が多め。
箸でつまんで、餃子の表側を見てみると、とてもきれいにヒダが折り込まれていた。
ぷりっとした細めの麺。
思ったよりもオイリーなスープの存在によって、まんま期待した通りの味とはいかないまでも、このラーメンは十分に「昔ながらの」という看板を掲げるに値する。
それにしても、やっぱ、ちょっとオイル感が強く独特のクセがある。
とは言え結局、ラーメンを完食し、スープも完飲した。
このスープ、クセがあるから、クセになるのか。
ご飯は、柔らかめだった。
もう少し米の粒感が感じられる硬さのほうが好みなので、このご飯にはあまりテンションが上がらなかった。
正月2日。店の前の道路を通るクルマが少ない。
そのためか、店内はお正月らしい静かさ。
カウンター向こうのテレビでは箱根駅伝。
ラーメンをいただいたので、次はモツ煮込みに取り掛かる。
味噌の香りが立ち昇り、なんともイイ感じだ。
内蔵の臭みが上手に抑えられている。
この器に盛られているモツの煮込みを構成している具材は、ほぼモツのみ。
いっしょに煮込まれていたであろう根菜類は見当たらない。
モツ煮の上にはネギが散らされている。
どうしても「噛み切れない」ってイメージが付きまとってしまう食材。それがモツ。
しかし、目の前のよく煮込まれたモツは、ふかふかで柔らか。
かなり時間をかけて煮込んでいることが分かる。
このモツの煮込みは、まったくストレスなく、いとも簡単に噛み切れる。
これが「口の中でほどける」ってやつか。
こんなモツの煮込みに出会えたことは素直にうれしい。ただ、もう少しモツの歯ごたえを残してくれてもよかったかなとも思う。
モツの、クニュクニュとして、いつまで噛んでも、噛んでも、噛んでも。
それでも噛み切れないモツの独特の噛み応え。
ときに「あれ、これってちゃんと火が通ってないのかな」なんて、不安になりながらも噛み続けるモツ。
ゴムでも噛んでるんじゃないか、と錯覚するほど噛み切れない歯ごたえも、ひょっとしたらモツの魅力の一つなのかも。
そうは言っても、味噌で丁寧に時間をかけて煮込まれたモツは食べやすい。
薬味はネギでも申し分ないのだけれど、モツ、それも味噌煮込みと言えばやっぱり七味の出番。
七味唐辛子をワサワサかけて、白メシをワシワシっとかき込む。
素朴で家庭的な味付けの具合も良くて、気が付けばどんどんとメシを持っていく。
これ、良くできている。
ご飯がすすむ。
お漬物。
白菜に柚子の香り。
口の中をさっぱりとさせてくれる。
会計をする際に、クーポン券とミカンを頂いた。
クーポン券は、具体的にどのような特典があるのかは分からないが、せっかくなので、お財布にしまった。
お礼を言って店を出た。
牛スジ煮込み定食
この日の夜、牛スジ煮込み定食が気になりだした。それも猛烈に。
モツ煮が美味かったんだから、牛スジ煮込み定食も、きっと美味いはずだ。
なんとしても牛スジ煮込みをいただいておくべきだろう。
また、正月真っ只中。どこの店が開いていて、どこの店が閉まっているのか分からない。
そんな状況の中で、らーめん千歳は1月3日も営業している。
だから、ふたたび千歳へゴーだ。
翌日、らーめん千歳を目指して自転車をとばす。
自転車で久慈川を渡る。
われらが茨城県が持っている土木建築の全テクノロジーを駆使して作られた橋。
茨城県のレインボーブリッジ。
日々、茨城の「ヒト、モノ、カネ」がこの橋を行き来し、茨城県の未来とその発展に使われる。
まさに茨城の未来への懸け橋。
雨の多い季節には、水面下に沈むこの橋も、天気に恵まれた正月三日には、このように水上に顔を出してくれていた。
年明け早々に、これは実にラッキーだ。
きっと今年は、何かイイいことがあるに違いない。
今日も千歳の店先には、赤い暖簾が掲げられている。
風に煽られて、暖簾がはためく。
「こんにちわー」と店に入り、前日と同じように、カウンターのすみっこに腰掛ける。
ここが、ぼっちの指定席だ。
今日も大将と女将は笑顔で迎え入れてくれた。
前日と違うのは、カウンターの向こう側に、若いキレイな女性店員さんが増えていること。
ここの娘さんだろうか。
女将に似て、とても綺麗な女性だ。
この女性も、大将と女将と同じようにニコニコとしていて、とても愛想がいい。
冬の乾燥した空気のなか、自転車をとばしてきたのでノドがカラカラだ。
まずはオレンジジュースを注文する。
てっきり、バヤリースの小瓶と、小さなコップが出てくるものと期待したが違っていた。
チューハイのグラスだ。
さっそくオレンジジュースを一口飲んで、すぐに分かった。
これは「なっちゃん」だ。
なぜなら先ほど、女将さんが冷蔵庫から「なっちゃん」のペットボトルを出して注いでくれたのだから、これは「なっちゃん」で間違いない。
一息ついて、さっそく牛スジ煮込み定食を注文する。
5分もまたずに配膳された。
時間の掛かるような料理じゃないとはいえ、出てくるのが早い。
どうやらご主人は、ラーメンと餃子の担当らしく、この日は厨房に立たない。
定食メニューは女将が担当されているらしく、娘さんといっしょに準備をしてくれた。
昨日のモツの煮込みと同じように、ネギが散らされている牛スジ煮込み。
器が前日のモツよりも、一回りほど大きい。
ご飯は好みの炊きあがり。
だが、すこしだけ米の粒が崩れている。
それに、部分的にパサついたところがあったのが残念。
味噌汁かと思ったら、中華スープだった。
どちらかと言えば、ラーメンのスープといった感じだ。
前日にいただいたラーメンのスープに近い印象。
小口のネギが散らしてあるが、それ以外の具材はナッシング。
やはりちょっとオイル感が強くて、私にはちょいと苦手な味だった。
味噌汁が欲しいところだが、味噌煮の牛スジとかぶるから、あえてこの中華スープなのかも知れない、と思いなおした。
でも、やっぱり味噌汁が欲しい。
牛スジ。
トロトロに炊きあげられた牛スジはめっちゃ柔らかい。
よく味が染みている。
こちらも前日のモツ煮と同じく、器の中は、ほぼ全てが牛スジで満たされている。
そして、やはり家庭的な美味しさ。
けっこうな量の牛スジ。
煮込み料理は、時間をかけるほど当然、具材は柔らかくなるが、汁が煮詰まっていやな雑味が出てくる。
この牛スジからは、ふしぎとそんな雑味は感じない。
丁寧な調理がされている。
カウンターのメニューには「モツ、牛すじのスープはコラーゲンですので、ご飯にかけて食することをお勧めします」の一文。
コラーゲンといえば美肌効果。生憎と私には必要ないものだ。
しかし、女将さんの肌を見るに、案外と効果があるのかも知れない。
女将さんはいったいお幾つなのか分からないが、色白の肌はツヤツヤ。良い意味で年齢不詳感が漂う。
なんでも人体を構成するタンパク質の30%がコラーゲンだそうで、コラーゲンの繊維にカルシウムなどの無機物が付着して、骨ができるている。
たしかそんなコトを何かで読んだか聞いた。
コラーゲン云々はおいておいても、この牛スジの煮込み。なんていうのか、滋味、滋養に富んでいる。
小皿には煮物。
優しい仕上がり。
レンコンのシャクシャクとした歯ごたえが、柔らかい牛スジ煮込みと対をなしている。
きっと、女将はお料理が好きなのだろう。料理に対する丁寧な向き合い方が伝わってくるやさしい煮物。
年の初めに、イイものをいただいた。そんな気にさせてくれる、うれしいひと品。
お正月らしく、紅白のなます。
塩気も酸味も丁度良い具合。
カウンターの向こうでは、母娘が楽しそうにおしゃべりをしている。
娘さんは嫁ぎ先から里帰りをされているらしい。
仲の良い親子は、とても幸せそうなご様子だ。
店には陽の光がよく差し込み温かい。
腹も満たされて、なんだか眠くなってくる。
ああ、自転車で帰るの、かったりぃ・・・
食事を終えて会計をすると、クーポン券2枚とミカンをいただいた。
前日のクーポン券が財布に入っていることを思い出したが、しかし今さらクーポンを出すってのも、なんだか気が引ける。
これで財布の中には、クーポン券が3枚。次こそはこのクーポンを使わせてもらおう。
ごちそうさまでした。
らーめん千歳の基本情報
場所はこちら
らーめん千歳の基本データ
住 所
〒319-1231 茨城県日立市留町1084−2
電 話
090-8104-9012
営業時間
11時00分~14時30分
17時00分~21時30分
定 休 日
日曜日
らーめん千歳のメニュー
※ 価格は2020年01月のもの。
ラーメン
600円
チャーシューメン
750円
つけめん
750円
ワンタンメン
750円
ワンタンスープ
650円
キムチラーメン
750円
チャーハン
650円
半チャーハン
400円
カレーライス
500円
※ 全品大盛り100円増し
クッパ
550円
もつ煮込み
450円
牛すじ煮込み
650円
手作り餃子(5個)
400円
ライス
100円
生ビール
600円
瓶ビール
600円
樽ハイ
500円
焼酎/水割り
500円
日本酒一合
550円
オレンジジュース
220円
ウーロン茶
220円
コーラ
230円
ノンアルコール(ドライゼロ)
380円
モツ、牛すじのスープはコラーゲンですので、ご飯にかけて食することをお勧めします。