【そば然】個性的なちょっと変わったお蕎麦屋さん@茨城県那珂市

茨城県那珂市には、とても入りにくいお蕎麦屋さんがあるという。

入りにくいといっても、それは物理的に入りにくいのではなく、心理的に入りにくいらしい。

いったいどんなお蕎麦屋さんなのだろう?

なんとも興味がそそられる。

 

それが今回ご紹介する「そば然」だ。

そば然

やぁ諸君、ごきげんよう。

ぼっちメシ研究所のジャムだ。

今日のランチは那珂市のそば然でお蕎麦だ。

そば然の外観

茨城県那珂市 そば然 (27)

のどかな田舎の風景の中を自転車で走る。

この前日に、大洗の街中を無駄に走りまわったため、足がフラフラだ。

足にうまく力が入らず、思うように足の力をペダルに伝えることができない。

 

「あ、あれ、足って、どうやって使うんだっけ?」

 

とにもかくにも、118号線を北上し、本日のお目当ての蕎麦屋さん「そば然」を目指してひた走る。

茨城県那珂市 そば然 外観 駐車場

そば然に到着。

お店の前は駐車場で、6台分の駐車スペースが確保されている。

しかし意外なことに、店の外観はまったくもって普通のお店だ。

この外観からは入りにくいって印象は全く受けない。

ちょっと拍子が抜ける。

茨城県那珂市 そば然 外観 (7)

暖簾。

やや、情報過多なきらいがある。

目に飛び込んでくる情報がとても多い。

では、その情報を1つずつ見ていくこととしよう。

茨城県那珂市 そば然 外観 (13)

「2019 新そば 打ち始め候」

なるほど、これは楽しみだ。

茨城県那珂市 そば然 外観 (2)

「遠路よりの ご来店 まことにありがとう ごあじます。 只今、 打ちたて 商い中 手打ちそば然」

非常に丁寧な文章から、客に対するこの店の感謝の気持ちがあらわれている。

かなり好印象。

茨城県那珂市 そば然 外観 (5)

「舌代」

メニューとそのお値段も、店の外に書かれている。

じつに明朗会計。

茨城県那珂市 そば然 外観 (3)

そして、このウェルカムっぷり。

なんだ、めっちゃくちゃ入りやすい店じゃないか。

茨城県那珂市 そば然 あと八歩

そして暖簾の先にはコレ。

「そば然入り口 おつかれさま あと 8歩」

なんてありがたい心遣い。

茨城県那珂市 そば然 外観 (15)

さっそくお店に入ってみる。

こんにちわー

店内の様子

茨城県那珂市 そば然 (2)

 

 

え   ?

 

茨城県那珂市 そば然 入り口のディスプレイ (1)

お店に入ったとたん、一瞬にして自分が「どこに何をしに来たのか」が分からなくなった。

完全に自分を見失った。

この空間はいったい何なんだ?

 

しばし混乱した後に「お蕎麦屋さんに、お蕎麦を食べに来たんだ」ということを思い出す。

 

「四十にして惑わず」

かの孔子が残したありがたいお言葉。

その言葉の意味は「人間、四十歳にもなれば、自分の生き方に迷いが無くなる」という事らしい。

私も40代になって久しい。しかし、この店には惑った、迷った、それもだいぶ。

茨城県那珂市 そば然 入り口のディスプレイ (3)

いや、よく見てみると、いたって普通だ。

普通の蕎麦屋だ。

ラーメン屋に赤い暖簾があるように、居酒屋に提灯がぶら下がっているように、料亭では鹿威しがカッコーンとなっているように。

たいていは、どこの蕎麦屋にもこんな感じの顔や、オブジェがディスプレイされている。そんなのが普通の蕎麦屋ってもんだ。

 

そうだ、ぜんぜん、フツーの蕎麦屋じゃないか・・・

茨城県那珂市 そば然 店内 (3)

恐るおそる、お店の中を伺う。

ごめんください、と声を掛けると、この店の奥様と思われるかたが出てきて「いらっしゃいませー」と対応してくれた。

「お好きな席へどうぞー」

あぁ良かった。普通の方のようだ。

なんとなく、もっとアバンギャルドな、たとえば美輪明宏のような奥様が出てくるのかと思い、なにか身構えていた。

ちょっと安心した。

 

店内は非常にコンパクトだ。4人掛けのテーブルが3席のみ。

手前のテーブルにはすでにお客さんがいらっしゃっていた。

一番奥のテーブルに座った。

茨城県那珂市 そば然 店内 (4)

非常に個性的な店内。

茨城県那珂市 そば然 店内 (5)

こういうタイプのお蕎麦屋さんは初めてだ。

と言うか、こんなタイプのお蕎麦屋さんって、他にあるのだろうか?

オーダー

茨城県那珂市 そば然 メニュー

とりあえず、メニューを拝見。

ここ、そば然の蕎麦はすべて二八蕎麦。

今日はかなり寒い。だから久しぶりに温かいお蕎麦が食べたい気分だ。

なんだか「とりけんちん 温スープそば」ってのが良さそうだ。

大盛りはプラス200円だが、初めての店なので、蕎麦の盛り具合がわからない。大盛りはやめておこう。

 

奥様にオーダーを伝える。すると「新蕎麦になったばかりですので、温かいお蕎麦よりも、冷たいお蕎麦のほうが美味しいですよ」とのこと。

なるほど、それもそうだ。

激しく同意。

私も蕎麦は「温」よりも断然「冷」が好きだ。

 

蕎麦通って人種なら、ここでもりそばに行くのだろうが、私は蕎麦通ではないし、なにより生来の食いしん坊万歳型。

「雪満月もりそば とろろ・うずら卵」ってのにしてみよう。

茨城県那珂市 そば然 店内 (2)

注文を済ませて、もう一度店の入り口のほうへ。

改めてオブジェを見てみたいと思った。

茨城県那珂市 そば然 店内 (1)

写真を撮っていると、5名様がご来店。

雪満月もりそば

茨城県那珂市 そば然 雪満月 (2)

テーブルに戻ると、この店のご主人と思われる男性が蕎麦を運んできてくれた。

おそらくお歳は五十代の中ほど、もうちょい上かも。

ご主人も、やっぱり普通の方だったので安心した。

てっきり志茂田景樹のような人が店主をしているものかとばかり思っていた。

茨城県那珂市 そば然 雪満月

これが雪満月の部分か。

月に見立てたウズラの卵を上側にして写真を取ればよかった。

今さら気づいた。

茨城県那珂市 そば然 大根の煮物

大根の煮物。

これがめちゃくちゃ美味い。

牛肉のそぼろの旨味をたっぷりと吸い込んだ大根の旨さ。

煮汁には少しトロミが付いていて、アツアツ。そして大根にしっかりと絡みつく。

それに大根の葉っぱのシャキッとした食感と苦味の効いたさわやかさ。これがとても良い。

この味付けの上手さ。

たぶん、この店が出す料理はどれも美味いだろう。

茨城県那珂市 そば然 蕎麦 (1)

蕎麦。

てっぺんには「一反もめん」のように、大きく切った蕎麦がのっている。

おもしろい。

こいつを箸でつまんで、蕎麦汁は浸けずに食べてみる。

ムチッとした噛み応え。ほんの少しの間をおいて、新蕎麦の香りが鼻の奥に昇ってくる。

あーコレコレ。来たよ、これだよ、お蕎麦だよ。

すでにこれだけで大満足っす。

茨城県那珂市 そば然 をば汁

蕎麦汁に浸けていただく。

蕎麦汁は軽めの仕上がり。出汁が香るってほどではないが、これで必要十分だ。

ちょっと迷ったのが「雪満月」の刻み海苔、山芋、ウズラの卵をどう食べるのか?

これらは薬味として、頂くべきか。

 

悩んだ末、蕎麦汁を雪満月の皿にたらし、そこに蕎麦を浸けて頂く事にした。

この食べ方でよかったのかな?

茨城県那珂市 そば然 蕎麦 (3)

蕎麦の盛りは控えめ。

男性はもちろんのこと、女性でもペロリだろう。

大盛りにするべきだったか。

 

お蕎麦を頂いていると、あらたに2名様がご来店。

しかしすでに店内は満席。

「相席よろしいでしょうか?」

ということで、相席をお願いされた。

もちろん、ぜんぜんOK。

 

50代くらいご夫婦が、私の向かいにお座りになった。

とても品のあるご夫婦だ。

とくに奥様のほうはグレーの髪の毛をかなり短くカットされていて、どこか都会的な雰囲気がある。

茨城県那珂市 そば然 わさび

わさびはチューブのもの。

ホースラディッシュ的なカドの強い辛さ。

このわさびはちょっと残念だった。

 

向かいに座ったご夫婦の注文は、旦那様が私と同じ「雪満月」で、奥様のほうは「とりけんちん」。

ついでに私も追加で「豚バラなんこつ 温スープ蕎麦」を注文した。

茨城県那珂市 そば然 店内 (7)

見知らぬご夫婦と、1つのテーブル。

対面に座って一緒に蕎麦を待つ。

こういう場面って、なにかお話をするべきだろうか?

 

なんだかこの雰囲気というか、この妙な間に耐えられず「ちょっと表の写真を撮ってきます」と伝え、カメラを持ってテーブルから離れた。

追加注文のあとは写真撮影とご主人とのお話

茨城県那珂市 そば然 外観 (10)

何枚か写真を撮っていると、「COFFEE&FOOD 白と茶」と書かれたオブジェが目にとまった。

なんだかこれ、どこかで見たことがある。

ライトが灯った姿が、リアルに脳裏にうかぶ。

 

これを、ここ118号線沿いで見たのかどうかもあやふやだが、たしかに見たことがある・・・気がする。

もともと、ここ「そば然」は喫茶店か何かだったのか?

それとも、ご主人がどこからか手に入れたこの看板をオブジェにしたのか?

半口を開けたまま看板を見上げていると、ご主人が煙草を吸いながら店から出てきて、話かけてきた。

 

「このお店、もうすぐ無くなるよー」

えぇ、なんだって!?

いったい何の話をしているんだ?

茨城県那珂市 そば然 外観 (11)

ご主人の話によると、店の前を通る国道118号線が拡張されるそうで、現在の場所では営業ができなくなるそうだ。

今後は店の場所を移転して続けるか、はたまたお店を閉じるのか、それはまだ未決だという。

 

追加の蕎麦が届くまでのあいだ、ご主人とお話をさせてもらった。

この店は、金砂郷の蕎麦粉を取り寄せているそうで、ご主人の言葉を借りれば「本物の常陸秋そば」を使っているそうだ。

やはり常陸秋そばは、普通の蕎麦粉に比べると、だいぶ高いらしい。

常陸秋そばの価格は外国産蕎麦粉の3倍もするという。

「でもやっぱり、常陸秋そばの方が美味いんだよね」と仰っていた。

茨城県那珂市 そば然 外観 (1)

私が「美味しいお蕎麦でした」と伝えると、ご主人は「蕎麦はいい蕎麦粉を使ってるんだけど、腕のほうがダメでね」とおっしゃる。

いえいえ、そんなご謙遜を。

ほんとに美味しいおそばでした。

「ちょっと量は少なかったけど」という言葉は飲み込んだ。

 

今後、お店のほうは「気持ちがあれば」続けてくれるそうだ。

さて、これから「そば然」はどうなるのだろうか。

茨城県那珂市 そば然 小物 (2)

ふたたび店の中へと戻り、ディスプレイされている作品を見学する。

ここでは手作りの小物が売られている。

しかし値札が張ってあったり、なかったりする。

一目見ただけではどれが販売品で、どれが非売品のオブジェなのか分からない。

茨城県那珂市 そば然 店内 (6)

携帯用と思われるフォーク。たしか400円だった。

キーホルダーっぽいけど、これをポケットに入れたら間違いなくポッケに穴が開くだろう。

でも、ちょっとほしい。

茨城県那珂市 そば然 小物 (1)

お店でも使われている盛台が販売されていた。

「日本の食は”目”で食べるそうです。ONLY ONEの盛台で食すれば きっと美味しいかも知れません。 すのこ 丸・角共に¥2,000」

写真は撮っていないが、すぐ隣には「すのこ 丸」バージョンも販売されている。

追加したお蕎麦が届いた

テーブルに戻ると、追加注文した「豚バラなんこつ」が運ばれてきた。

何故か「先に注文した、相席のご夫婦のお蕎麦」より早く。

蕎麦を運んできたご主人が「はーい、順不同ねー」と事もなげに、明るくおっしゃる。

 

ちょっと、気まずい雰囲気だ。

なぜ、後から注文した私の蕎麦が、先に注文した相席のご夫婦の蕎麦より先に出て来たのだろうか?

おそらく目の前にいるご夫妻も、私と同じことを思っているはずだ。

なにか、とても気まずい。

 

すぐに、目の前の蕎麦にがっつくと、さらに気まずくなりそうなので、なんとなく蕎麦の写真を撮って「間」を作る。

なんのための「間」なのかは、私にも分からないが、とにかくそうした。

すると、いったん奥に戻ったご主人が、ご夫妻の分の蕎麦も運んできてくれて、なんとなく一旦は場の空気がほどけた。

さて、じゃあ、みんなで一緒にいただきましょうか。

豚バラなんこつ 温スープそば

茨城県那珂市 そば然 豚ばら軟骨

「豚バラなんこつ」は、冷たいお蕎麦を温かいつけ汁で頂くスタイル。

カケのように丸ごと温かい蕎麦を想像していたので、これはちょっと意外だった。

まずは蕎麦は浸けず、スープを一口いただくと、これがべらぼうに美味い。

汁の中には軟骨付きの豚肉が入っていて、この豚肉と骨からは、こってりとした出汁と脂がでている。

まるで醤油とんこつのようなこってり感。それにプラスしてカツオの風味と旨味。

蕎麦屋らしいかえしの醤油の香り。

これ、めちゃくちゃ美味い。

後を引いて、さらにズズズと頂いた。

あぁ、つけ汁が無くなっちゃう。

茨城県那珂市 そば然 蕎麦 (2)

蕎麦は先ほどの食べた「雪満月」と同じ。

私は十割蕎麦よりも、二八蕎麦のほうが好きなのかもしれない。

 

つけ汁に入ったエノキとネギの青いところが実にいい仕事をしている。

ラーメンスープのようなこの醤油とんこつを、ぎりぎり蕎麦の領域に押しとどめている。

いや、押しとどめちゃいないかもしれないが、美味しいからこれで全然おk。

茨城県那珂市 そば然 蕎麦湯

小型のタンブラーのような器で蕎麦湯が出て来た。

けっこうトロミがある。

 

蕎麦湯を楽しんでいると、NHKのど自慢が始まった。

なんと今日の会場は茨城県の日立市。

ここ3週間ばかりは、お昼時に伺ったお店のTVで毎回この番組を見ている。

いったいこの番組の人気の秘密とはなんだろう?

地方の「のど自慢」の素人が歌を披露する。

たったそれだけの番組なのに、なんで受けているのか、とても不思議だ。

 

向かいに座ったご夫婦も食事を終えて、奥様のほうがのど自慢をみているこの店の主人に話しかける。

奥 様「このオブジェって、ご主人が作られているんですか?」

ご主人「んー、そう、趣味で」

奥 様「へー、お願いすれば、私の顔も作ってもらえたりできるんですか?」

ご主人「いやぁ、美人の顔は作りにくいんだよ。多少くずれた、特徴がある顔の方が作りやすいんだよ」

 

はー、うまいこという。

私もあれくらいの軽い感じのやりとりができたら良いのだが、おそらく私にはあのスキルを身に付けることはできないだろう。

客商売をながく続けた人間だけが、身に付けられるスキルなのかもしれない。

 

向かいのご夫婦に軽く会釈をしてテーブルを離れ、お会計を済ませた。

店を出る間際、ご主人に「ぜひお店を続けてください」とお願いすると「んー、どうだろー」とのお返事。

なんとも味のある人だ。

茨城県那珂市 そば然 (28)

帰り道、あの「白と茶」のオブジェを思い出した。

私は、あのオブジェを以前、どこかで見たことがある。

ご主人に聞いてみればよかった。

次の機会に聞いてみよう。

そば然の基本データ

そば然のメニュー

※ 価格は2019年12月のもの。

 そば然のメニュー 

 もりそば
   700円

 だいこん ワカメ シャキシャキもりそば
   800円

 雪満月もりそば
   850円

 なめこ・だいこんおろしもりそば
   850円

 豚バラ・なんこつ 温スープそば
   800円

 きのこいろいろ 温スープそば
   800円

 とりけんちん 温スープそば
   850円

 大盛りは 200円プラス

そば然の場所はこちら

国道118号線沿い。

JR水郡線の瓜連駅と静駅のあいだ。

静駅からのほうが若干ちかい。歩きで10分ほど。

基本情報

 そば然の基本情報 

 住  所 

 〒319-2102 茨城県那珂市瓜連1317−3

 電  話 

 029-296-0084

 営業時間 

 11時30分 ~19時00分

 定 休 日 

 水曜日